聖南西教育研究会=教師合同研修会で知識共有=他地域教師も参加で連携促す

教師合同研修会の様子
教師合同研修会の様子

 聖南西教育研究会(会長渡辺久洋)による教師合同研修会が1月18、19日、サンパウロ州サンミゲル・アルカンジョ市のコロニア・ピニャール青年図書館宿舎で行われた。ブラジル日本語センター協賛、国際交流基金後援。同研修会は日本語教育に関する情報収集と教育技術向上を図ると共に、地域の教師の親睦を深めることを目的に実施される。今回は聖南西地区の日本語学校7校の教師15人に加え、ノロエステ地区の弓場農場日本語学校からも参加があった。
 18日午前9時に開会式が行われ、開会挨拶に立った西川修二コロニア・ピニャール文化体育協会会長は「今の時代は家庭で日本語を使わず、親の考え方も変わってきているので先生方も大変だと思うが、この研修会で色々なことをたくさん学び、今年の学校活動にいかしてほしい」と参加教師らを激励した。原口イレーネ聖南西文化体育連盟教育部長、広瀬ペドロ同地モデル校運営委員も挨拶を行った。
 原口教育部長の所属する聖南西文化体育連盟は、日本語教育活動を活動の最重要項目とし、同研究会に毎年約5千レアルの助成を行っている。原口教育部長は自身も共に学びたいと午後まで教師とともに講義に参加した。聖南西地区として日本語教育を支援しようという姿勢が原口教育部長の姿からも伺えた。
 研修会でははじめに、国際交流基金の日本語教育アドバイザー斎藤誠氏による講義「ARCSで授業力を上げよう」が行われた。参加者からは「非常にわかりやすく、新たな発見もあれば、すでに取り入れていて確信と自信を得たものもあり、とてもよかった。今回参加していない先生方にもぜひ知ってほしい」と好評を博していた。
 斎藤氏は他講師の講義にも参加し、休憩時間や夕食後も積極的に参加と意見交換を行った。参加者らは普段接する機会のない日本語専門家に日本語教育に関する疑問をぶつけていた。
 「アイデア紹介」と題し、参加全教師がそれぞれ5分程度で学校活動のアイデアを紹介し、授業のアイデアや副教材、幼児教育、工作やゲームの仕方などのアイデア発表も行われた。参加者は「実際にすぐに役に立つアイデアをたくさんもらった」と披露された内容を書きとめていた。
 初日最後の授業として赤間学院やサンパウロ市の州立校で教師をしている田中エジナ氏による「児童教育における心理学」の講義が行われた。講義では教育環境におけるADHD(注意欠如・多動症)の生徒に関して取り上げられた。50年前と比べ、現代はADHDの生徒が非常に増えているとの研究結果が紹介され、参加教師からは「パンデミック後にADHDの可能性のある生徒が増えていて困っている」という声が聞かれた。
 2日目は斎藤氏による「実生活につながる敬語の指導法」、ピラール・ド・スール日本語学校教師の岡田エリーナ氏による「幼児・児童への教育活動」、サンパウロ州レジストロ市の四つ葉学園教師の浅沼ファビアーノ氏による「日本語教育に使えるゲーム活動」の講義が行われ、午後3時半に終了した。
 閉会式では参加者感想の発表があり、参加者からは「幼児教育、青少年、成人、入門期から上級まで、私たちが扱う学習者はとても幅広いが、テーマはそれらに適応していて、バラエティに富んでいてよかった」「今回の講座は教師の直接的なスキルアップに繋がる講座と、生徒への理解を深める講座の両方があったので、とても良かった」などの感想が聞かれた。
 15年間教師を務め、昨年退職したカッポン・ボニート日本語学校の上村千代子氏は「私はもう教師ではないが、来年の研修会もぜひ参加したいし、これからも皆さんを応援している」と述べた。今年から同校の教師になる堀智恵美氏は「今年5年ぶりに学校に戻ってくることになりました。上村先生も退職され、一人でとても不安だけど、研修会で色々なアイデアをもらい、話をするうちに、頑張ろうという気持ちになった」と地区内教師の繋がりが助けになっていると語った。
 弓場農場日本語学校から参加した弓場としこ稔子氏は「もっと大人数で聞かないと勿体無いくらい充実した研修会だった。この地区は、若い世代の先生方がたくさんご活躍されていて、頼もしく感じた。これから自分達の世代に何ができるのか、よく考えたいと思う。」と刺激を受けた様子だった。
 渡辺会長は「ブラジル日本語センターや各地区主催の研修会があり、今はオンラインでも様々な勉強会があるが、地区の研修会に他地区の教師が参加すれば、情報交換や横の繋がりができ、教育活動の質が高められるのではないかと思う。来年は地区外からもっと多くの教師に参加してもらえたら嬉しい。パンデミックで中止している他地区の日本語学校を見学する区域外研修をできれば今年再開させたい」と地域主体で繋がることによって伯国の日本語教育をより発展、活発にしていきたい意向を示した。

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