聖南西教育研究会=「目の前の人を大切に」=スマホ無し林間学校で地区交流

第30回聖南西林間学校参加者ら

 聖南西教育研究会(渡辺久洋会長)は11~12日、サンパウロ州サンミゲル・アルカンジョ市のコロニア・ピニャール文化体育協会会館で「第30回聖南西林間学校」を行った。聖南西地区の日本語学校7校から12~16歳の生徒33人と卒業生スタッフ、教師ら22人が参加した。

 聖南西教育研究会では日頃から日本語の学習とともに地区内の生徒間の交流に力を入れており、林間学校の他にも、「低学年デイキャンプ」「青空スポーツ教室」「お話学習発表会」などの交流行事を行っている。これらの行事が日本語学校に通い続ける動機づけとなっている生徒も少なくない。林間学校委員会を中心に、地区教師が半年以上にわたって各プログラムの準備を行い、実施している。
 開校式ではコロニア・ピニャール文化体育協会の西川修二会長が挨拶を行った。
 続けて林間学校の開催意義について渡辺会長が「皆の生活からインターネットやスマホは切り離せないものになっていると思いますが、目の前にある物事や人を大切にし、五感で感じるこのリアルな世界の楽しさ、素晴らしさを林間学校を通して感じ取って再認識してほしい。ぜひ忘れられない思い出を作ってください」と述べた。
 その後、様々な生徒と知り合うためのアイスブレイクタイムを経て、4つの班に分かれた。班長、副班長、班の目標などを決めた後に、ミニゲームを行った。
 昼食後のスポーツ活動では、体育館でソフトバレーボール大会、グラウンドで陣取り大会を行った。大きな声援をあげ、力を合わせて全力で取り組む参加者の姿に、場は大いに盛り上がった。
 夕食は各班でカレーライスを作り、「自分の班のカレーが一番おいしい!」など、会話を笑顔で楽しんだ。
 キャンプファイヤー点火式の後、火を囲んでフォークダンス、テーマソング合唱、肝試しを行った。
 2日目の午前はオリエンテーリングを行った。
 午後は創作劇のグループ発表を行った。創作劇は、今回の林間学校のテーマソング「日本昔話・英雄」をコンセプトに、数回設けられたグループ活動時間に各班が話し合い、練習を重ねた。発表は全員が日本語で行い、完成度も高く、発表を終えた生徒らは満足げな顔を見せた。 

 進行を担当した教師は「今、みんなが感じているその気持ちは、みんなで協力して一生懸命練習してきたから感じられるもので、それこそがリアルな時間であり、今を生きているということ」と生徒らに語った。
 この2日間、生徒たちは自ら起床し、共に食事を作り、使わない日はないというスマホを使用せずに、様々な活動を通じて人との触れ合いや交流の時間に身を浸した。生徒同士の交流や新しい仲間を作るのはもちろんのこと、協力することや話し合うことの大切さ、また、しおりを見て自分たちで考えて集合、行動するなど、団体行動、集団生活に大事な様々な事を学び、学校の枠組みを超えた「聖南西日本語学校」の教育活動を体験した。
 10月末に来伯し、ピラール・ド・スール日本語学校で教師として活動する川﨑奈央子さんは、「自校の生徒と他校の生徒が楽しそうに交流、青春する姿を見れてとても嬉しかった。自分の班に感情移入しすぎてしまい、コツコツ点数を上げていく姿に涙が出ました。教師という立場をつい忘れて応援に力が入りすぎてしまったことは反省ですが、貴重な体験をさせてもらいました」と興奮気味に感想を語った。

グループ集合写真

 渡辺会長は「参加回数が多く、顔見知りも多い15、16歳の参加者が少なかったため、以前の盛り上がりには及ばなかったが、パンデミック期間を考えると今回は十分良かった。13歳の参加者が多かったので、来年以降は仲間意識が芽生えて、もっと盛り上がるはず。数年でパンデミック以前の状態まで引き上げる目標を掲げ活動をしているが、活動を再開した一昨年は『再始動(リスタート)』。地区行事全てを通常通り実施できた昨年は『助走(ホップ)』。今年は『加速(ステップ)』。そして来年、再来年に『完全復帰(ジャンプ)』と、順調に段階を経てきている」と日系社会で数十年継承されている「学習者が子供」の日本語学校、日本語教育の今後に確かな手ごたえを感じていた。

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