『オキナワ サントス』試写会=沖縄県人会支部等で巡回上映へ=人文研協力、謝罪請求署名も視野に

試写会に参加した関係者
試写会に参加した関係者

 ドキュメンタリー映画監督の松林要樹(ようじゅ)氏が撮影・編集・監督を手がけた作品『オキナワ サントス』のブラジル国内での試写会が、昨年末の12月20日午後1時からサンパウロ市リベルダーデ区のブラジル沖縄県人会(高良律正会長)本部会館で開かれた。主催の沖縄県人会役員、ブラジル沖縄県人移民研究塾(宮城あきら代表)のほか、今後の巡回上映を協力するというサンパウロ人文科学研究所関係者ら20人ほどが集まって視聴した。1月中旬に実行委員会を立ち上げ、県人会支部など各地で上映会を実施していく方向で話し合われた。

 同作品は、1943年7月8日にブラジル政府が敵性国民だった日本移民らに対して行なった、サントスからの24時間以内の強制退去命令を受けた人々の貴重な証言をまとめたもの。
 ドイツ潜水艦がサントス沖でブラジルとアメリカの商船を撃沈したことを受け、ブラジル政府がサントスに住んでいた枢軸国側の日本移民、ドイツ系移民を強制退去させるという悲劇が起きた。
 松林監督が取材中に偶然発見した強制退去者名簿から、日本移民585家族の6割が沖縄県人だったことが分かった。そこで、同監督は沖縄県人会の協力を得て退去命令を受けた生存者の証言を集めた。
 沖縄県人会では2019年12月にブラジル政府に対して、第2次大戦前後に起きた日本移民迫害に関する損害賠償を伴わない謝罪要求をしているが、現在までに政府側からの反応が無い状況となっている。
 ブラジルでの巡回上映は元々、松林監督から希望があり、沖縄県人会に打診されていた。しかし、日本で先行上映された関係や、コロナ禍の影響もあり、当地での上映が延期されていた。
 試写会後は、今後の上映会の方向性について話し合いが行われた。宮城代表は、文協、県連、日文連等の日系主要団体や本紙、ウチナープレス等のメディアと連携し、コロナ禍がおさまると見られる3~4月ごろからの実施を一つの方向性として準備を進めていく必要性を説明した。
 実際の強制退去が行われたサントスを皮切りに、ビラ・カロン、カンポ・グランデ、サントアンドレなど県人会支部のある場所での上映会開催を視野に入れている。
 また、松林監督をブラジルでの上映会に招待することも計画されており、そのための資金造成として上映会入場の際の協力金やスポンサーを募ることも検討。さらに、上映プログラムの作成など具体的な内容については、1月14日に予定されている第1回実行委員会を通じて詳細内容を決定していくという。
 宮城代表は「まだ社会的にはサントス強制退去事件の解明は十分ではなく、可能な限り、多くの証言を求めてやっていきたい」と述べ、今後の上映会では参加者にブラジル政府への謝罪を求める署名運動を展開していく考えも示された。
 試写会には、ブラジルで調査中の熊本大学教育学部の山城千秋教授も参加。作品について「沖縄の人に見てもらうとともに、ブラジルの3世、4世の若い世代の方々にも見てもらいたいと思います」と話していた。

 

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