【日本移民の日】世界のカケハシ=日本から「先祖訪ねて三千里」=先祖サーチで移民の大伯父判明=世代を超えて親戚14人と対面

家系図を持ちながら集まった笑顔の今野一族と山口さん(右下)

 「先祖を調べることで、今まで関わりのなかった親戚と話すきっかけになった。今回はブラジルまで来て本当によかった」―宮城県仙台市に住む山口和宣さん(48)は5月25〜28日、親戚に会うためにブラジルを訪れた。これまで日本以外に親戚がいることも知らなかったが、判明したきっかけは伯父の勲さんが作成した家系図を発見したからだ。実際に来伯した結果、思いもよらない感動的な過去を知ることができ、山口さんは地球の反対側に広がっていた親戚との絆を噛みしめながら帰路に就いた。

 昨年、伯父の勲さんや祖母のフミさんが亡くなった際に、祖父の欄に知らない名前が家系図にあった。それから自身のルーツに興味が湧き、戸籍を取り寄せるなどして家系図作りに取り組み始めた。
 山口さんは北海道札幌市生まれ。24年間外資系製薬会社で勤務した。働きながら医学系の大学院で博士、ビジネススクールでMBAを修得した。その後、多言語サービス、医療コンサルティング、先祖サーチなどを行う株式会社「世界のカケハシ」を設立した。
 家系のルーツを辿る中で、「元々の今野家の先祖は岩手県生まれ。北海道倶知安町、その後南富良野町に移住し農業を営んでいたが、大凶作の影響で長男一家が1934年にブラジルへ移住したことが分かった」と山口さん。

ブラジルで発見された北海道で撮られた写真。(左から)今朝松さんと元枝さん(山口さんの伯母)、哲也さん、美千惠さん、真ん中に今朝松さんの母ツルさん、右隣にタカさん、勲さん(右)に抱えられている赤ちゃんが山口さんの従兄弟の豪人さん

 北海道で家族は餓死寸前まで追い込まれていたが、今野今朝松一家がブラジル移住したことにより、南富良野に残された留守家族(本邦に残った未帰還者の家族)は食い繋ぐことができ、生き延びることができたという。それほど当時は困窮していた。
 今朝松一家は山口さんの母方の祖父の兄一家で、山口さんからみて大伯父にあたる。今野今朝松さん(故人、当時30歳)、妻のタカさん(同、同24歳)はサンパウロ州ノロエステ線奥地ペレイラ・バレットのラランジャ・アゼダ農場(Fazenda Laranja Azeda)に入植し、7人の子どもを育てた。
 山口さんはプロフィールアプリLinkedInで、今朝松さんの三男にあたるユウジさん(サンパウロ州在住、78歳)の名前を発見。(山口さんからみて伯従父にあたる)メッセージのやりとりを通じて親戚だということが分かり、他にも多くの親戚がいることを知った。
 親戚との初対面は、26日に本編集部で行われた。先に到着した山口さんは「まるで子どもが生まれる前のソワソワと似た緊張に襲われている」と笑っていた。
 ブラジル側からはユウジさんとその娘サマラさんの呼びかけに応えた14人の親族が集まり、山口さんを温かく迎え入れた。山口さんは母と伯父から預かっていた手紙や家系図、日本からのお土産を手渡し、自身が調べた家族の歴史を伝えた。思いを受け取った親族は山口さんに感謝を述べ、とても喜んだ。

家系図を通して家族を紹介する山口さんと真剣に見入る親戚一同

 山口さんは感謝を述べるのは自分の方だとし、「今まで知らなかったブラジル日本移民について知るきっかけになった」とした上で、「当時の移民条件に唯一当てはまった今朝松一家が、家族を救う為にブラジル移民に名乗り上げ、日本に残った今野家を救ってくれたことに感謝しかない」と言葉を強めた。
 誤解も解けた。今朝松さんらは日本語しか話せず、ポルトガル語中心のユウジさんら子どもたちと会話の壁があり、父の心情をきちんと理解できていなかった。ユウジさんは「父は日本軍に志願して太平洋戦争に参加できなかったことに負い目を感じていた」と思っていた。だが、山口さんは1942年に日伯が国交断絶して訪日することすらできなくなっていた時代背景などを説明すると、「父は負い目を感じる必要はなかった。誤解していた」と親戚たちは喜んだという。

まさかと驚くブラジル側一族=「先祖の縁の地を見たい!」

家族の歴史を知り親交を深める今野一族

 「騙されたかと思ったよ!」―山口さんと会う前の心境を、集まった親戚に聞いた第一声がそれで、皆がうなずき、その場が笑いの渦に包まれた。「ブラジルから日本に行って先祖を探すならわかるけど、逆だからね」とのこと。
 5月26日、サンパウロ市にある当編集部に、宮城県に住む山口和宣さん(株式会社「世界のカケハシ」代表)の親戚にあたるサンパウロ州カンピーナスやペルイベ等に住む今野一族14人が集まった。
 日本に2000年~06年まで滞在していた今野サマラさん(41歳)は、「今野家の先祖が北海道に住んでいたことは知っていて、実際に訪ねたらどんなに素敵だろうと思っていたが、伝手もなく断念した。まさかこんな形で日本の親戚に出会えると思っていなかった」と嬉しそうに語った。
 最初は緊張を隠し切れない一同だったが、拍手で出会いを祝い、山口さんは一人ひとりに握手を交わし挨拶をした。山口さんは北海道銘菓「白い恋人」や今野家ゆかりの岩手県江刺の銘菓「岩谷堂羊羹」等をプレゼントした。また、山口さんの母静佳さんと伯父の正弘さんから預かった手紙を渡した。これらを受け取った今野家は自分らも手紙を渡したいと話し、距離を縮めた。
 山口さんはパワーポイントにまとめた今野家の歴史を説明した。当時の戸籍謄本や、北海道や岩手の写真を紹介し、一同は真剣な様子で説明に聞き入っていた。
 その後は歓談タイムとなり、互いの身の上話を通して充実した時間を過ごした。
 今野ユウジさんは「私たちの知らなかった家族の歴史を話してくれた。今日という日を作ってくれた和宣さんに感謝をしています」と話した。
 また、日本に娘がいるという今野マルシア・フミエさん(59歳)は「和宣さんは(制度上)取ることが出来ない母方の祖母の宮崎家の戸籍を、日本に居る娘を通じて取得して家系図を充実させたい」と意気込んだ。
 さらに「普段、ブラジルにいても会っていなかった親戚にも会えた」「和宣さんのお陰でみんなと話すことができた。感謝したい」との声が挙がり、山口さんの来伯がブラジル内の親戚の結び付きも強めるきっかけになった。

墓石に描かれた蝦夷富士=半世紀ぶりに約束果たす

先祖のお墓参りをする山口さん。墓石には今朝松が乳幼児期から中学生頃まで過ごした、北海道の倶知安のポンクトサン(現在の大和地域)から見た思い出の景色羊蹄山(蝦夷富士)が描かれている

 再会を果たした翌々日、山口さんははいとこにあたるヴィトルさん(39歳)と先祖が眠るサウダーデ墓地へのお墓参りをした。
 墓石の正面には森越しに見た富士山のような山が描かれていた。山口さんはこれを見て「あっ、これは蝦夷富士(羊蹄山)だ」とピンと来たという。左右に描かれた樹木が針葉樹だったからだ。今朝松さんは最後まで故郷北海道を愛し、地球の反対側で自らの墓石に描かせていた。
 山口さんは「日本の今野家を代表してお参りできた」と達成感をにじませ、墓地の違いを通じても日伯の文化差を楽しんでいる様子だった。
 初めて知った事実もあった。実は今朝松さんとタカさんは1971年7月末、北海道に帰省していたという。その事実を裏付けるかのように、今回の旅で、ブラジル側の親戚が持っていた日本での写真が見つかった。そこには山口さんの従兄弟の豪人さんが赤ちゃんだったころの姿が映っていた。
 ヴィトルさんは「今朝松さんは日本の家族の『ブラジルに遊びに行くから』という言葉を信じていた」という。しかしその後、誰も訪伯が実現できず、53年後に世代を超えて、山口さんがその思いを果たすこととなった。
 日本で山口さんがこの事実に辿り着かなかったのは、2016年の南富良野水害で過去の写真や手紙が流されてしまったからだ。そうした経緯もあり、日本に残る親族もこの約束を知らなかった。
 さらに、書類上では知りえなかった親戚にも出会うことができた。また、日本側もブラジル側も知らない親戚の写真もあり、日伯それぞれの今野家が詳細を探っているという。
 こうした多くの発見を得た山口さんは今回の訪伯が「想像していたよりも実りあるものだった」と喜び、「日々、生活に精一杯で先祖の話をする機会が今までなかった。しかし、今回の先祖探しを通じて、日伯で家族が再結束するきっかけになった」と振り返る。「母を訪ねて三千里」ならぬ「先祖を訪ねて三千里」の旅は、予想を超えて充実したものとなった。「自分の子どもをはじめとして先祖の経験を語り継ぐと共に、家族の絆を大事にしていきたい」と話し、再来伯を約束して日本へ戻った。


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株式会社世界のカケハシは言語・医療・先祖調査についての確かなバックボーンを活用し、人と人をつなぐサービスを提供しております。事業を通じて「世界の架け橋」となれるよう、日々サービスを提供・開発しております。

サイト https://senzosearch.com/

企業概要

会社名 株式会社世界のカケハシ
代表者 山口和宣
設立年月 2023年7月
所在地 宮城県仙台市

 
事業案内

ファミリーストーリーサービス 先祖調査・家系図作成
多言語による 翻訳サービス(73カ国語以上に対応)
音声合成ナレーション
動画作成
コンサルテーション
医用 イラストレーション制作
医学分野における 分析、教育、講演、コンサルテーション

受賞歴

令和5年度宮城県スタートアップ加速化⽀援事業デジタル活⽤・DX推進枠

先祖サーチ 料金プラン(海外在住者向け)

スタートプラン
エントリーにあたる基本プラン。先祖調査に興味がある、初めての先祖調査の方におすすめです。贈り物にも最適です。
*日本在住者からのオーダーは半額になります。
価格 プランに含まれる内容
1系統 2,000レアル~ 1.家系図(横長 最長1200×297mm)印刷
2.謄本と家系図PDFファイル
3.取り寄せた謄本原本
2系統 4,000レアル~
4系統 7,000レアル~
全系統 14,000レアル~

 

ベーシックプラン
当社の標準プラン。スタートプランよりも詳細な調査で、家族の歴史を紐解いていきます。次の代、さらにその次の代へと引き継いでいくものとしておすすめです。
*日本在住者からのオーダーは半額になります。
価格 プランに含まれる内容
1系統 6,000レアル~ 1.家系図(横長 最長1200×297mm)印刷
2.謄本と家系図PDFファイル
3.取り寄せた謄本原本
4.家族史年表
5.先祖の生まれた場所の情報提供
6.謄本に記載された全員のお名前を入れた「すいすい家系図」ファイル
2系統 12,000レアル~
4系統 20,000レアル~
全系統 40,000レアル~

 

企業史調査プラン
企業の歩み、変遷を専門家の目線で調査し、ご報告いたします。周年記念や代表交代の際などにご活用頂いております。
価格 プランに含まれる内容
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