《記者コラム》「あっという間の人生」=悔いを残さぬ生活を

友人の一人がワッツアップで、「あっという間の人生」という動画を送ってくれた。「夢中で駆け抜ける十代」「残りの時間を意識して選択する五十代」「多くを学んだという百歳」のように、各年代を短い言葉で綴った後、「どの年代もあっという間に過ぎてゆく」「行きたい所があるなら迷わず行く」「会いたい人がいるなら会いに行く」「やりたい事があるなら全てやる」「人生は自分が思うより短く いつ終わるかわからないから」と結んでいる。
思わず書き留めた後半の言葉を読み返しながら、コロナ禍の中、「行きたい所がある」「会いたい人がいる」と言う主人に、少し落ち着くまで待とうと言ってしまい、出向いた時には、会いたがっていた人の内2人が既に亡くなっていたという苦い経験をしたことを思い出した。しかも、その内の一人は奥さんに痴呆が始まっており、何度説明しても同じ移住地に住んでいたことを思い出してもらえず、お世話になった方への別れの挨拶もできない上、老いの現実に向き合わされた主人の帰りの足取りが重かったことも鮮明に思い出す。
また、20代の終わりに、「20代は10代の半分、30代は20代の半分」と聞き、50代や60代になったらもっと速く時間が過ぎるのかと思ったこと、学生時代に読んだ、やり残したと後悔せず、日々を効率的に過ごすため、「思い立ったが吉日」「右手で箸を置きながら左足で立ち上がる」をモットーにしていた方のコラム、いつ頃からか、「明日からやる」という主人に、「今日からやろう」と言い始めたことなども思い出す。
見聞きしたこと、心に留めたことをそのまま実行するのは容易ではないし、健康状態などで、待つことや諦めることを余儀なくされる時もあるだろう。だが、青春とは人生のある期間ではなく、たくましい意志や豊かな想像力、燃える情熱などで言い表せる心の持ち方を指すという説があるし、今できる最善をと考えることはできる。
パンデミックの間にご主人を亡くしたもう一人の女性は、先日、85歳の誕生日を迎えたが、足が痛くて杖などが手放せないが目も耳も達者で、休日に訪問した時も、「訪ねて来る人が減った」「最近は○○からも連絡が来ない」と嘆いていた。だが、帰りがけにはいつも通り、「またおいで」と声をかけてくれた。
作家の林芙美子氏は女性を花に例え、楽しく若い時代は短く、苦しい時が多かった半生を振り返った短詩、「花の命は短くて 苦しきことのみ多かりき」を色紙などによく書いていたという。
人生を達観できる器ではなく、今も時間に追われる毎日だが、先日見た、衰えてきた声帯も簡単な訓練で強化できるという番組のように、いくつかの問題は解決や改善の方法もある。あっという間に終わる人生なら、目の前の物事にも挑戦し、行きたい所に行き、会いたい人に会い、やりたい事をやったと言える、充実した毎日を過ごしたいと改めて思わされたことだった。(み)