ブラジル大使が再びイスラエルに=両国の外交状況は依然不透明

ルーラ大統領によって召還されてから3カ月ぶりとなる24日、フレデリコ・メイエル在イスラエル・ブラジル大使がイスラエルに戻ったが、両国の外交危機は未解決のままだ。摩擦の発端は、イスラエルの軍事行動をナチスのホロコースト(第2次世界大戦中のアドルフ・ヒトラーによるユダヤ人大量虐殺)になぞらえたルーラ大統領の発言だったが、現在も関係修復に向けた具体的な動きは見られていないと、同日付エスタード紙など(1)(2)が報じた。
メイエル大使が再びイスラエルへ戻ったことは、ルーラ政権が最高レベルの外交代表を再確立したことを意味するものではないし、同大使を留任させることを意味するものでもなく、彼の今後や同国のブラジル大使館の状況は未定のままだ。同大使は当面、テルアビブに留まる予定だが、実際に職務を再開することはない。ブラジル外務省によれば、数日中に正式な決定が下されるはずだという。
セルソ・アモリン大統領付外交問題特別顧問は、「大使は個人的に屈辱を受けた。その結果、我が国も屈辱を受けたのだから、再び職務に戻るべきではない。ブラジルに恥をかかせることが目的だった」と語っている。
同大使は2月、ルーラ大統領がガザ地区でのイスラエルの軍事行動をホロコーストになぞらえた直後、首都エルサレムのホロコースト博物館での会議に呼び出され、地元の報道陣の目前で、しかも、メイエル氏が十分に理解しないヘブライ語で、カッツ・イスラエル外相から公開叱責を受けた。
カッツ外相はホロコーストで殺害された家族のリストを示し、「ルーラ大統領が発言を撤回するまで、イスラエルでは彼を『ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)』とみなす」と宣言した。
これに対して、ブラジル政府は謝罪を拒否しただけでなく、メイエル大使を無期限で召喚し、事実上、関係を凍結させた。この反応は、イスラエル当局のルーラ大統領への対応に不満を表明する手段として、ブラジル政府が計算したものだった。
カッツ外相はその後数日間、ルーラ大統領はイスラエルに謝罪する義務があり、彼の発言は「ブラジルの恥であり、ブラジルのユダヤ人の顔に唾を吐きかけるものだ」と主張し続けた。同時に、ネタニヤフ政権はブラジルのルーラ反対派と交流し、右派の知事達やボルソナロ前大統領を招待した。ルーラ氏の発言はイスラエル国内からも強い反発を招き、同国政府は議定書を破棄するに至った。
ダニエル・ゾンシャイン在ブラジル・イスラエル大使をはじめとするイスラエル首相官邸の同僚たちは、ガザでの紛争とその結果に関するブラジル政府の立場には失望したと何度も述べた。また、ゾンシャイン大使はブラジル側からの苦情を聞くために、4回以上、ブラジル外務省に呼び出されたと明かしている。
アモリン氏は中国公式訪問時に王毅外相と話し合い、ロシアとウクライナ間の戦争についての提案書に署名。その中で紛争終結交渉のためにロシアも参加する和平会議の開催を提唱した。ガザ紛争についても話し合われたが、話題の中心はウクライナだったとアモリン氏は言う。
同氏は「今日起きていることは、私を非常にうんざりさせる。(第一次)ルーラ政権時代、私はイスラエルに5回、パレスチナにも5回足を運び、希望を持っていた。あらゆる困難がある中でも、交渉したいという意思を両側で見た。しかし、今日はそうではない」と述べた。