年金制度=引退世代1人に現役世代2人=失業者多寡や急激な高齢化で

応用経済研究所(Ipea)が発表した調査結果によると、ブラジルの社会保障制度(年金など)の受給者1人に対する拠出者(支払う側)の割合は現在でも2人以下だが、この比率は向こう数十年間で悪化し、2051年には同制度への拠出者数よりも被保険者数の方が多くなると予想されると、3日付ヴァロール紙(1)が報じた。
この試算は、全国家庭サンプル調査(Pnad)継続版、地理統計院(IBGE)が2018年に作成した人口予測、および社会保障制度の管理記録に基づいている。一般(RGPS)、公務員(RPPS)、軍人を対象とする全ての社会保障制度と継続的な社会援助給付金(BPC)を考慮したもので、出産手当や旧障害手当(現在の一時的障害給付)その他の給付金は含まれていない。
同調査によると、受給者1人に対する拠出者は、2012年には2・26人だったが、22年には1・97人に低下した。この比率は51年には0・99人まで低下し、60年には0・86人に達する見込みだ。
具体的な数字を見ると、22年の年金、遺族年金、BPCの受給者総数は3140万人だが、51年は6120万人、60年には6640万人に達すると推測されている。一方、拠出者数は、22年の6180万人が、51年は6060万人、60年は5720万人に減少すると予測される。保険料負担者の総数は時間の経過とともに減少する一方で、被保険者の数は2倍以上に増えるのだ。
この研究を行ったロジェリオ・ナガミネ氏とグラジエラ・アンシリエロ氏は、拠出者と受給者の比率が悪化しているのは、年金制度の自然な成熟過程と、人口の急速かつ急激な高齢化が原因だと指摘している。別の要因としては、非正規雇用や失業、そして職に就かずに税金を納めない人々の増加が挙げられている。
22年の場合、現役世代(20〜64歳の男性と20〜61歳の女性)の55・5%が社会保障に加入していなかったという。
「このような人口動態の傾向から、向こう数十年間は受給者総数が拠出者総数よりも急速に増加するだけでなく、生産年齢人口の減少が予想されることから、拠出者総数は停滞または縮小する可能性さえある」と研究者たちは書いている。
ヴァロール紙が取材した専門家たちの意見では、何らかの対策が講じられない限り、期限付の一時採用者やオンラインのプラットフォームサービスを介して単発の仕事を請け負う派遣労働者(通称ギグワーカー)の増加で、状況がさらに悪化する可能性があるという。
サンパウロ総合大学(USP)経済経営学部のルイス・エドゥアルド・アフォンソ准教授は、社会保証制度の持続可能性確保のために、年金受給の最低年齢を引き上げ、寿命の変化に応じてその年齢を自動的に調整する仕組みを導入することを提案している。また、納税者の数を増やすため、政府が非正規雇用者を正規形態に移行させるための政策を採用し、その成果を評価するよう勧告している。
レオナルド・ロリン元社会保障局長は、長期的に持続可能な制度とするために、民間労働者を対象とするRGPSに資本化制度を導入することを擁護している。同氏は19年の年金改革原案にはこの条項が含まれていたが、最終的には削除されたことを想起し、「世界で最も持続可能な制度には資本増強層がある」と強調した。
また、出生率向上のため、出産手当金の長期支給や子どもが2人以上いる女性に対する社会保障給付の引き上げなど、女性に大きな保護を与える労働市場政策を政府が推進することも提案している。
Ipeaの研究者らは、この研究による予測は全て、社会保障のための十分な資金を長期にわたって保証することを目的とした措置の必要性を説くものだと言い、「現在の政治的な議論は短期的な課題に集中しており、中長期的な資金調達にはまったく関心がないようにみえる」と指摘している。