最高裁=マルケス判事の独断で物議=大物容疑者を足輪なく釈放=縁の地で疑惑政治家出馬宣言

最高裁のカシオ・ヌーネス・マルケス判事が16日、リオの大物賭博師ロジェリオ・アンドラーデ氏の電子足環を外すことを命じた上、自宅にも帰らせたことが物議を醸している。同判事はこれまでも繰り返し、アンドラーデ氏に有利な判断を与えている。また、同氏が拠点とするエスコーラ・デ・サンバで3月に、ボルソナロ前大統領推薦のブラジル情報庁(Abin)元長官のアレッシャンドレ・ラマジェン下議(自由党・PL)が市長選出馬宣言を行ったことでも物議を醸したばかりだった 。18日付メトロポレスなど(1)(2)が報じている。
アンドラーデ氏は父親の代からリオでは有名な賭博一族のリーダー的存在で、リオのカーニバルとの関係の深いジョーゴ・ド・ビッショ(動物の絵とそれに対応する数字を使った違法賭博)やスロットマシンなど、リオの賭博の胴元と見られている。同氏は賭博にまつわる組織犯罪の嫌疑で何度も告訴されており、2022年に逮捕されたが、同年12月に足環装着や夜間帰宅、定期的な裁判所への出頭などの条件付で刑務所を出た。
カシオ判事の今回の判断は守秘で行われたもので、同氏はこれで、1年以上にわたる足輪付の生活から解放され、監視の目を離れた自由の身となった。今回は夜間の外出禁止命令も解かれている。
カシオ判事はボルソナロ前大統領の指名で2020年11月に就任以来、アンドラーデ氏に有利な判断を4回下し、有利な票を1回投じている。
最初に下した有利な判断は、2021年8月にアンドラーデ氏がライバル関係の賭博氏フェルナンド・イグナシオ氏の殺害を命じた嫌疑で逮捕令状が出たが、逃亡していた時で、逮捕命令を撤回。同年12月には最高裁第2小法廷での同件での審理で報告官を務め、同氏の無罪を主張。その主張が聞きいれられていた。
アンドラーデ氏は22年5月に賭博の一種「ジョーゴ・アザール」で息子のグスターヴォ氏と共に犯罪司令者として逮捕されたが、同年12月、高等裁のジョルジェ・ムッシ判事の命令で電子足環付きで釈放された。この時の捜査「カリグラ作戦」で捜査対象となった一人で、2018年3月に起きたマリエレ・フランコ・リオ市議の殺害実行犯として19年に逮捕されたミリシア(民兵)ロニー・レッサ容疑者は、アンドラーデ氏と親密な関係にあったとされている。
アンドラーデ氏に関しては、3月にも物議を醸すことが起きたばかりだ。3月16日付エスタード紙によると、リオ市西部にあるエスコーラ・デ・サンバ、モシダーデ・インデペンデンテの本部ではこの日、ボルソナロ前大統領も出席し、アレッシャンドレ・ラマジェン下議のリオ市長選への出馬表明が行われた。
モシダーデの後援者はアンドラーデ氏とその父親で、同エスコーラは当初、PLに無料で場所を提供することを持ち掛けたが、PLが断り、1万レアルの使用料を払ったという。
こうした経緯に加え、今回のカシオ判事の判断は検察からの意見も聞かずに行われており、最高裁の同僚判事たちの間でも、「あまりにも早い解放ではないか」などの疑問の声が飛び交っていると報じられている。