
沖縄戦の激戦地・摩文仁(まぶに)で半世紀以上、犠牲者を慰霊するための花を売り続けてきたおばぁの姿を描いたドキュメンタリー映画「摩文仁 mabuni」(映画監督=新田義貴)を応援するためのネット募金(https://motion-gallery.net/projects/mabuni)が現在行われており、沖縄移民の多いブラジルでも賛同する声が上がっている。目標金額200万円を超える金額が集まっているが、30日まで募金可能だ。
摩文仁は沖縄本島最南部の地名で、沖縄戦で最後の激戦地となった場所だ。アメリカ軍に追い詰められた日本軍兵士が、多くの沖縄の住民を戦闘に巻き込みながら命を落とした。戦後、こうした死者の霊を慰める慰霊塔が数多く建てられ、平和祈念公園として整備され、毎年6月には政府首脳も参列して戦没者追悼式典が行われている。すぐ近くには、壕の中で多数が戦争の犠牲になったひめゆり学徒隊で有名な「ひめゆりの塔」が立つ。
戦後移民の宮城あきらさん(87歳、沖縄県出身)はこの映画制作の話を聞き、「私の従姉(いとこあね)の宮城フミは、ひめゆり学徒でひめゆりの塔の下にある壕の中で集団自決した一人です。戦後ブラジルに移住した多くの沖縄移民は、島尻地方に限らず、各地の激戦地の出身者が目立つのが特徴。我々にとっても摩文仁は、戦争を思い出した時に必ず瞼に浮かぶ場所。このような映画を作ろうという試みには大いに賛同する」と述べた。
映画監督でジャーナリストの新田義貴さんは元NHK記者。同サイトには「僕は若い頃から、この摩文仁を訪れるたびに不思議な感覚に襲われてきました」と前置きし、「摩文仁では戦後ずっと、人々が死者の魂に祈りを捧げてきました。その〝慰霊〟という見えない力が、この土地を清らかな空気に変えてきたのではないだろうか」と綴る。
12年前、旧摩文仁村の米須という集落にある慰霊碑「魂魄之塔」のそばで、半世紀以上も参拝用の花を売っているおばあさんに出会った。この映画の主人公、大屋初子(おおやはつこ)さんだ。彼女は戦争中、集団自決が起きた壕から家族と一緒に命からがら逃げだし、戦後は地元で農業をしながら参拝客に花を売ってきた。「僕は彼女の慰霊の思いが、そしてその美しい花たちが、死者の魂を慰めているのだと確信しました。この出会いをきっかけに、彼女を主人公として〝戦争と慰霊〟をテーマにした映画を作りたいと考えるようになった」と書かれている。
同監督の劇場映画デビュー作は、那覇市にある栄町市場の再生を描いたドキュメンタリー映画『歌えマチグヮー』(2012年)。長崎で生まれ育った被ばく3世の女性・松永瑠衣子さんが福島県や青森県の原子力の平和利用の現場を訪ね歩いたドキュメンタリー『アトムとピース~瑠衣子 長崎の祈り』(2016年)など。
今作のスケジュールは4月に映画仕上げ、配給交渉。5月に宣伝(マスコミ試写会など)、6月21日からシアターイメージフォーラムにて映画公開。その後、決まり次第全国の劇場で随時公開。