選挙が続く中南米諸国=現政権の評価が焦点に

2025年は中南米5カ国で選挙が予定されており、政治、経済、治安に関連する問題を中心とする危機への各政権の対応を評価する重要な機会となると、11日付BBCブラジル(1)が報じた。
ラテンアメリカ地区18カ国で調査活動を行う非営利団体「ラティノバロメトロ」の地域調査責任者マルタ・ラゴス氏は、今年の選挙では「イデオロギーはゼロ」で、国民は政府の実績のみを評価していると説明。同氏によれば、国民は政府に対して期待しておらず、ただ「要求する立場」に立っており、政府が期待に応えられなければ、即座にその政権を「追い出す」と警告している。また、今年の選挙は厳しい極限状況に直面している政府に対する有権者の本音を浮き彫りにし、地域全体に重要なメッセージを送る可能性があるとした。
エクアドルでは2月9日の総選挙で再選を目指すダニエル・ノボア現大統領が、治安回復を訴えている。同氏は、ギジェルモ・ラッソ前大統領の汚職疑惑により、23年に急遽大統領に就任。犯罪撲滅を掲げて治安維持に軍を動員したが、軍の過剰権限が問題視されている。同国では、経済やエネルギー問題も選挙結果に影響を与え得る。決選投票は4月13日の予定。
ボリビアでは8月17日に総選挙が行われ、ルイス・アルセ現大統領が再選を狙う。アルセ氏は20年に発生した政治危機から同国を立て直すと約束して当選したが、現在も経済危機とドル不足が深刻な問題となっている。また、アルセ氏とエヴォ・モラレス前大統領との党内対立や、昨年6月の軍事蜂起による緊張も影響を与えそうだという。決選投票は10月19日の予定。
チリの総選挙は11月16日で、ガブリエル・ボリッチ現大統領の左派連合が評価される。ボリッチ氏は21年の社会運動を背景に当選したが、左派と右派双方から強い批判を受けており、社会保障制度改革や税制改革の遅れが指摘されている。候補者には、右派のエべリン・マテイ前労働相やミシェル・バチェレ元大統領、極右のホセ・アントニオ・カスト氏らが名を連ねているが、誰が有力かはまだ不確定だ。
ラゴス氏は、同国の政治指導者は「以前より遥かに弱い」とし、国民は「何も成し遂げられなかったことに対する巨大な失望感」を抱いていると指摘している。決選投票は12月14日の予定。
11月30日に総選挙が行われるホンジュラスでは、大統領再選が禁じられているため、現職のシオマラ・カストロ氏は出馬しない。同氏は、麻薬取引や武器使用に関する容疑で有罪判決を受けたフアン・オランド・エルナンデス前大統領の後任として、21年に当選。だが最近では、義弟が麻薬カルテルに関与していることを示唆する動画が公開され、政権に対する不信感を呼び起こしている。これにより、大統領選には現政権と野党から多数の候補者が名乗りを上げており、選挙激化が予想される。各政党は3月に予定される予備選挙で候補者を決定する。
アルゼンチンでは10月26日に連邦議員選挙が行われ、下院の半数と上院の1/3が改選される。この選挙は23年12月に就任した超自由主義者のハビエル・ミレイ大統領の政権運営に対する「一種の国民投票」となると、専門家は指摘している。だが、議会で改選される議席数が少ないため、ミレイ氏は改革を進めるためには引き続き他党との連携が必要と見られている。
ベネズエラでは地方選挙と議会選挙が予定されているが、選挙日程は未定の上に、野党が不正選挙を理由に参加するかどうか決めかねている。昨年の大統領選挙では投票結果が公表されないまま、ニコラス・マドゥーロ氏が勝利を宣言し、10日に就任式も行われたが、これが国際社会からの非難を集め、透明性が疑問視されている。
24年の調査によると、ニカラグア以外の中南米諸国では前年を4%ポイント(PP)上回る52%の人が民主主義を支持している。だが、ホンジュラスとボリビアでは民主主義に対する不満が高まり、ホンジュラスでは前年を2PP下回る18%、ボリビアは12PP減の10%に止まった。
また、同地域全体では現政権支持者の56%が民主主義を支持している一方、政権不支持者は48%と差があり、選挙へにも影響すると見られている。