「ブラジルに着いたと聞いて幸せ」=舵の上で大西洋横断した亡命希望者

舵の上で14日間も過ごし、命がけで密航者したナイジェリア人の様子(10日付G1サイトの記事の一部)
舵の上で14日間も過ごし、命がけで密航者したナイジェリア人の様子(10日付G1サイトの記事の一部)

 エスピリトサント州のビトリア港で10日、大西洋横断する貨物船の舵の上に14日間も潜伏していたナイジェリア人4人が発見された。この事件で保護された4人のうち2人が、TVグローボの報道番組「ファンタスチコ」(1)の取材に答え、密航を決意させた母国の壮絶な状況を語った。
 ローマンさん(35歳)とマシューさん(38歳)は命懸けでブラジルに逃げ込んだ。ローマンさんは「私には父親がいない。長男である私が、兄弟3人と母親の面倒を見ているが、母国では仕事がない。明るい未来のため、この密航の機会を逃すことはできなかった」と語った。
 一方、マシューさんの暮らしも壮絶だ。2人の子供がいるが、2020年の洪水で家を失っている。学校に通わせることはもちろん、食事を与えることもできない。「ここがブラジルだと聞かされた時は本当にうれしかった」と語り、舵の上にいたときは、自分がどこにいるのかわからず、ひたすら食料と水を求めて祈り続けた。
 14日間の密航は非常に危険だった。潜伏していた舵の上にあるわずか約2立方メートルの整備室には3人しか入れず、一人は交代で舵の上で過ごした。すぐ下に見える舵の周辺の強い水流と、エンジンの爆音で常に恐怖に震えていた。万が一、居眠りして体勢を崩したら転落する危険性があり、そうなれば大西洋の藻屑になるしかなかった。
 常に湿気は高いが、夜は寒く、日中は暑い場所だった。そこで最後の3日間は水なしで過ごした。彼らは亡命希望者として永住できる権利が与えられる見込みだ。
 ナイジェリアは人口2億1800万人を擁するアフリカ大陸で最も人口の多い国で、最大の経済大国でもある。しかし、貧困や失業率が高く、武力紛争も起きている。今年だけでもブラジルはナイジェリア人から230件の難民申請を受けていると報じられている。

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