SDGsビジネスのパイオニア=白木夏子さんに聞く=(上)

講演中の白木夏子さん

 3月8日の「国際女性デー」に合わせ、JICAブラジル事務所(江口雅之所長)は14日、「SDGs(持続可能な開発目標)ビジネスを通じて世界を変える:日系人女性起業家エンパワメントシンポジウム」をサンパウロ市で開催した。基調講演を担当したのは、日本から参加のエシカルジュエリーブランド「HASUNA」の創設者、白木夏子さん(41歳、鹿児島県出身)。SDGsビジネスの第一線で活躍し、起業家支援にも携わる白木さんに、自身のビジネス観や女性の起業に関して聞いた。(聞き手:大浦智子)

 エシカル(英:ethical)とは「倫理的な」という意味の言葉で、エシカルジュエリーとは、採掘から加工、流通販売の全工程を人や環境に配慮した体制で生産したジュエリー(宝飾品)を指す。
 国連は持続可能な社会を実現するためSDGs目標を定め、ブラジルでもあらゆる分野で社会問題解決を支えるビジネスが立ち上げられている。今後その傾向は一層強まっていくと予想される。
 白木さんは、2009年にエシカルジュエリーブランド「HASUNA」を設立し、11年には日経ウーマン・オブ・ザ・イヤーを受賞した。14年にForbes誌「未来を創る日本の女性10人」に選ばれるなど、世界的にも注目を集めている。現在は武蔵野大学アントレプレナーシップ学部教授も務め、女性の働き方や起業、ブランディング、サスティナビリティ、ウェルビーイング、SDGsなどをテーマに国内外で講演活動も行っている。
―ブラジルの印象は?
 ブラジルに来るのは今回が初めてで、来る前はリオのカーニバルのイメージが強かったです。実際に来てみて、人々のファッションの自由さと色彩の豊かさが印象に残っています。JICA横浜海外移住資料館などを訪ね、日系社会について事前に勉強はしましたが、実際に来てみて、これほど日系コミュニティが大きいとは思っておらず、驚きました。日本とのつながりが非常に濃いということを実感しました。

講演参加者ら

―ジュエリーブランド「HASUNA」の事業とは?
 HASUNAでは、ペルー、パキスタン、ルワンダほか世界約10カ国の宝石鉱山労働者や職人とともにジュエリーを制作し、エシカルなものづくりを実践しています。“未来へと受け継がれるジュエリーブランド”として、日本におけるエシカル消費文化の普及につとめています。
―ブランド名「HASUNA」の由来は?
 蓮の花です。蓮の花は、仏教やヒンズー教では清らかで美しい浄化の象徴です。蓮のように泥の中で育ち、美しい花を咲かせるようにとの思いを込めています。
―いつ起業に目覚めましたか?
 19歳の時、フォトジャーナリストの桃井和馬さんの話を聞き、国際協力の仕事に関心を持ちました。桃井さんは世界100カ国以上で紛争や貧困の現実、密輸などの状況を写真に収めています。
 通っていた大学が社会貢献活動に力を入れていたため、発展途上国のボランティアにも参加しました。南インドの鉱山での過酷な労働を目の当たりにして、「この状況を何とかしたい」と思いました。
 国連やJICAで働く道もあるだろうと考えて、卒業後は国連にインターン(短期就業体験)をしました。その後、投資会社に就職しましたが、「自分のやりたいこととは違う」という思いは消えず、「ビジネスの中で社会貢献がしたい」と考えるようになりました。(続く)

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