連載小説=自分史「たんぽぽ」=黒木 慧=第117話

 高級車に乗りたい気持ちはやまやまだけど、自分達の収入から割り出して余り無理のいかない値段の車で我慢するより仕方のない事である。それと私も七十二才、体力的にいつまで運転できるか、肉体的な勘はまだ余り劣えは感じないけど、眼の機能低下はかなり意識するようになった。白内障の始まりだそうだ。特に夜の運転や昼でも眼が疲れている時など、眼の焦点が合わなかったり、ボーっとぼやけてくることがある。この白内障はもっと悪化して来れば手術すれば割合簡単に治るそうである。色々なことから考察して運転の限界を八十才を第一段階として、その時の状況をみて八十五才位までは車で歩きたいと望んでいる。もちろん安全運転がその決め手であろう。行動範囲も段々狭くなって行くだろう。
・四月一日 宮崎県費留学生の高木エリクソン君(ベレン)と山県ナターリアさんが訪日。
・五月三日 ブラジル日系社会の中心的機関であるサンパウロ文協の役員改選があり、戦後派が敗れて二世エリート中心の上原幸啓、渡辺和雄派が勝った。もう一世の時代は終わったのだろうか。何かさびしい感じがする。私も評議員に立候補したけど落選した。
・五月十四日 ゴイアス州カルダス・ノーヴァス市の太陽ホテル招待のマレット・ゴルフ大会に参加し、私が優勝した。参加者六十七名、授賞式はすごいパーティーで盛り上がった。
・五月十九日 コチア青年親睦南ミナス旅行。カンブイー在の白浜さんの案内での楽しい旅であった。ポッソス・デ・カルダス・ゴルフ場で私は初めて正式な試合に挑戦してみた。三十六ホールを百五十打、まともに球に当たらない。
・五月二十日 ソロカバのるり子の次女、マリーがサンパウロの看護大学に入学したので、るり子自身もサンパウロ市のカイシャ・エコノミカ銀行に働く場所を移して二人でアパート暮らし。
・六月十日 黒木家家族皆集まり〈やきとり〉の試食会を行った。
・六月二十六日 NHKのテレビ放送が米国系のDirec-TVからGlobo系のSKYに変った。
・七月二十九日 日本の参議選で私達コチア青年の推した福島啓四郎氏は落選した。
・八月十日 家の前の芝生に火がついて火事になり、三アルケールの山が焼けた。
・九月十六日 後藤慶さんが永住権延長の件で一週間の予定で来伯した。皆で歓迎会開催。
・十月一日 私の出生月の十月は年金のため日本もブラジルも在留証明取得義務があり、また今回は三年に一度の運転免許証も更新した。
・十月七日 バルゼン・グランデのカラオケ大会は美佐子が主役 その頑張りで成功。悟も初めて新人で歌って優勝。茜二位。私は四位(ピレーネの山の男)。

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