連載小説=自分史「たんぽぽ」=黒木 慧=第61話

 夜は高校時代の同級会に招かれた。私のために特別に開いてくれたのだった。夕方六時から始まり、二人の先生と七人の級友との再会、懐かしさに胸が一杯。昔話を想い出しながら語り合う。級友の中にも何人かが他界していて皆で合掌。そのあと敏雄兄と木村君に案内されて、二次会へ。美女に囲まれて楽しいひと時を過ごす。
・四月四日(金) ふるさとの日向を発つ日。これで又、いつの日帰って来れるのか。山岡宗喜さんの車で宮崎まで連れて行って下さるとの親切な言葉に甘えて、宮崎ブラジル親善協会に行き、事前に頼んでおいたテープを境女央から受取った。そのあと山岡さんに宮崎市内の観光に案内され、午後一時四十六分発のバスで、小林、人吉、八代を経て、熊本に着いた。そこからローカル線で菊池郡泗水村福の本で一人で待っている美佐子の母、政子ばあちゃんの家に旅装を解き、一安心。静かな夜であった。
・四月五日(土) 美佐子のふるさとでの一夜が明けると、ひと時の政子母さんとの語らいの後、家を出ると眼の前に美佐子の昔、懐かしい山や川の風景が拡がっていた。ここ熊本では美佐子が主役である。美佐子の感激の心が伝わって来る。足に任せて歩き出した。いや、気持ちに引っ張られて歩き出したのだろう。彼女の昔、いつも通り慣れていた懐かしい道を今は二人して肩を並べて歩いた。洋裁の有田先生に会い、生田さんの風呂屋、小学校、合志川沿い、そして先月ブラジル訪問より帰られた福田のおばさんに会って話しがはずむ。そのあと、今ブラジルの私達の同じ部落で花作りをしている井上さんご家族からの頼まれ物を渡すために七城村の本家を訪ねた。そこには九十六才の井上さんの父君が自転車に乗って帰って来たところであった。帰りはそこのお嫁さんの車で送って頂いた。
 美佐子のふるさと熊本での一週間は余りにも行事が多く、それを全部書けば大変なので箇条書きに書いてみよう。
・四月六日(日) 美佐子の上から二番目の姉、鉄子とその夫、志水忠義さんとか来て、色々話して時を過ごした。志水さんは熊本県菊池地方の農業普及員長である。
・四月七日(月) 美佐子の洋裁の友達の松岡美佐子さんに案内されて、近くの県営農事試験場を訪問。そのあと高江の私達の恩人、金子りんの墓に参る。
・四月八日(火) 私はいとこの石崎貞義さんに天草五島の観光に案内され、又、美佐子も小学校時代の友達と同じコースを観光したと帰って来て、お互いにそれを知ってあとで大笑い。
・四月九日(水) 今日から明日にかけて美佐子の母、政子さんのふるさと津田などを訪問した。西原村の森家、乳牛を飼っているすぐ下の娘、つぼみおばさんの家。

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