「写真を撮りましょう」=高齢者狙う顔認証詐欺横行

 
犯罪者による高齢者の顔写真を悪用したローン契約の不正詐欺が横行している
犯罪者による高齢者の顔写真を悪用したローン契約の不正詐欺が横行している

 セキュリティ強化を目的に開発されたはずの生体認証システムだが、近年その技術を悪用した犯罪手口が急速に拡大している。とりわけ高齢者を標的とした詐欺が多発しており、生活支援を装って接近した犯人が被害者の顔写真を撮影し、その画像を用いて顔認証システムをすり抜け、被害者名義で銀行ローンを不正に契約する事件が相次いでいる。被害者本人の知らぬ間に多額の債務を負わされるケースも報告されていると1日付のG1(1)が報じた。
 リオ市警は6月25日、市内で高齢者を狙った詐欺を繰り返していた犯罪組織に対する捜査を実施した。(2)当該組織は、社会的弱者を支援する目的を装い、被害者に基礎食料品のセットを提供すると称して接触。犯人らは高齢者の写真を撮影し、取得した個人情報を用いて銀行口座を開設、被害者名義で給与天引き型ローンを契約していた。
 その結果、被害者が受給する年金や社会保障給付金が差し押さえられるなど、継続的な経済的被害が生じていた。得られた資金は複数の銀行口座に分散された後、グループのリーダー格の人物に送金されていたとみられている。
 被害者の一人セリア・モレノさんは、見ず知らずの2人組に声をかけられ、会話が弾んできた頃に「一緒に写真を撮りたい」と持ちかけられた。当初は単なる記念写真だと思い応じた。だが相手は「うまく撮れない」と繰り返しながら、10枚近くの写真を撮影。
 途中からは眼鏡を外して真顔で動かずにいるよう求められた。さらに、生活支援の一環として基礎食料品セットの受け取りを促され、本人確認書類の提示を求められた。書類はその場で撮影され、結果的に本人の知らぬ間に600レアル(約1万6千円)の給与天引きローンが契約されていた。
 こうした犯行では顔の輪郭や眼球の奥行き、口や耳の位置といった80点以上の計測ポイントをもとに個人を特定するデータが作られる。これは「顔の指紋」とも呼ばれるもので、本人確認のための生体情報として銀行などの認証に利用されている。この仕組みを逆手に取り、不正にローン契約などへ使われるケースが確認されている。
 専門家は顔認証が従来の署名に代わる強力な本人確認手段となっている現状を指摘。特に高齢者はデジタル機器に不慣れで、写真撮影に対する警戒心が薄いため、詐欺の標的にされやすいという。被害防止には、写真を撮られる際に顔を必要以上に近づけない、不審な人物からの繰り返しの撮影要求に応じない、眼鏡や帽子などの着用物は外さないことが重要だという。
 リオ情報技術・社会研究所のコーディネーター、ジョアン・ヴィクトル・アルシェガス氏は「金融機関、技術企業、そして政府が連携し、これらのシステムをより強固かつ安全にするために何ができるか検討し、再発防止に努める必要がある」と警告した。

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