BRICS首脳会議で合意模索=議長国ブラジルに試される調整力

2月26日、今年最初のBRICSシェルパ会合の様子(Ricardo Stuckert / PR)
2月26日、今年最初のBRICSシェルパ会合の様子(Ricardo Stuckert / PR)

 世界多極化を象徴する新興経済国グループBRICSは、拡大に伴う内部多様化と地政学的緊張という課題に直面している。7月6〜7日にリオ市で開催される首脳会議は、イランとイスラエル間の武力衝突や米国の関与、ロシアと中国の首脳の欠席という情勢の中で行われる。11カ国体制となったBRICSは合意形成が一層困難となったが、議長国であるブラジルは平和と国際法、多国間主義の旗印のもと、共同声明実現を目指す。今会議はBRICSの連帯が理念にとどまるのか、それとも行動へと結実するのかを占う重要な機会となると27日付ヴァロール紙など(1)(2)が報じた。
 BRICSでは現在、イラン・イスラエル間の武力衝突が新たな焦点となっている。加盟国イランは、共同声明にイスラエルと米国への非難を盛り込むよう強く主張。一方、アラブ諸国や西側寄りの国々は中立的表現を支持し、議長国のブラジルは反西側勢力と誤解されぬよう慎重な調整を進めている。
 ブラジルのマウリシオ・リリオ大使は、BRICSには国際法と平和の擁護者としての責任があるとし、率直な議論を通じた国際危機の克服と課題解決の推進を呼びかけている。
 専門家の多くは、今会議で共同声明が採択される可能性は高いと見るが、その内容は概括的なものにとどまるとの見方が強い。特にイラン・イスラエル間の緊張が調整を一層困難にしている。
 ブラジルは、ロシア・中国・イランといった立場の異なる大国と向き合う中で、2022年のウクライナ侵攻以降に激化した国際紛争を背景に、調停役としての手腕が問われている。元大統領府戦略担当長官のウセイン・カロウト氏は、今回の議題の3〜5割が安全保障や国連安保理改革、核開発問題に割かれると見通す。
 既に各国代表が声明文の文言調整を進めている。外相会議では安保理改革をめぐる対立で共同声明が見送られたが、貿易相会議では多国間体制と世界貿易機関(WTO)の改革への支持が確認された。首脳会議では気候変動やAIガバナンス、感染症対策などに関する個別声明も予定されている。
 BRICSは現在11カ国に拡大し、パートナー国も10カ国に達する。6月にはベトナムが新たに加わったが、多様化は合意形成を一層難しくしている。応用経済研究所(Ipea)のアンドレ・デ・メロ・エ・ソウザ氏は、南半球の連携は進む一方で、声明の内容が薄まる恐れがあると指摘。サンパウロ総合大学のフェリシアーノ・ギマランエス教授も、防衛・安全保障問題が他の重要議題に悪影響を及ぼさぬよう、ブラジル政府の外交手腕が試されると指摘している。
 今会議には、創設メンバーのうちブラジルと印国の首脳のみが出席見込み。ロシアのプーチン大統領は国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状により欠席し、ラブロフ外相が代行。中国も習近平主席が不参加を決め、李強首相が代理を務める。イランのペゼシュキアン大統領の出席も流動的だ。
 23年に加盟したインドネシアのプラボウォ大統領が初めてブラジルを訪れ、ルーラ大統領との会談が予定されている。両国関係は、インドネシアのリンジャニ山でブラジル人女性が死亡した事件をめぐり、情報の誤伝達により緊張が続く。
 会議には加盟・パートナー国のほか、ブラジルの外交方針に賛同するメキシコ、チリ、コロンビア、ウルグアイ、トルコ、アンゴラなども招待されている。一方、加盟を拒否したアルゼンチン、パラグアイ、マドゥロ大統領再選に批判が集まるベネズエラは招かれていない。
 BRICSは南半球を代表する国際フォーラムとしての存在感を高めつつある。議長国のブラジルが今会議を成功に導き、理念を行動へと結実させられるかは、BRICSの将来だけでなく、国際秩序の行方を左右する重大な試金石となる。

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