
アマゾン川中流域、アマゾナス州パリンチンスで27〜29日の3夜連続で民族祭「パリンチンス民俗フェスティバル」(通称ボイ・ブンバ)が開催される。同祭典は地域に根差した信仰と芸術、そして住民の誇りと対抗心が交錯する一大文化絵巻であり、2頭の牛(ボイ)を象徴する赤組「ボイ・ガランチード」と青組「ボイ・カプリショーゾ」が、伝統と創造力を競い合う形式で上演される。街全体が2色に染まる中、約12万人の観客が熱狂の渦に包まれると27日付G1など(1)(2)が報じた。
パリンチンスは州都マナウスから約370キロ離れた孤島で、人口は9万人余り。陸路は存在せず、飛行機かアマゾン川を船で12時間以上かけて航行する必要があり、見渡す限りの熱帯雨林の中に忽然と現れる「陸の孤島」だ。その地理的特性もまた、この祭りの特別な性格を際立たせている。そこで三晩、夜通し民族的祝祭が行われる。
ボイ・ブンバは1965年にパリンチンス大聖堂建設の資金調達を目的として創始されたもの。翌年より両組の牛が競演に加わったことにより、現在のような大規模な文化行事へと発展した。南米最大の野外芸術祭の一つとして知られ、信仰と伝統、芸術が融合した形態をとる。
今年の祭典は、青組「ボイ・カプリショーゾ」が「いまこそ再生のとき(É tempo de retomada)」をテーマに掲げ、森林の民の抵抗とアマゾン先住民の祖先の精神性を讃える作品を披露する。史上初の4連覇を目指し、3夜にわたり先住民族、黒人、北東部出身者の闘いを描き、アマゾンのコミュニティの力強さと、森林および文化の保護の重要性を強調する。
対する赤組「ボイ・ガランチード」は「民の牛、民衆の牛(Boi do povo, boi do povão)」を掲げ、祭りの大衆的起源を讃えるとともに、33回目の優勝を狙う。副題として〝われらは森の民、ブラジルの大地、ブラジルの牛〟を掲げ、多様なアマゾン文化の伝承と民衆の抵抗を表現する。
演目は専用に設計された、牛の頭部を模した「ブンボドロモ」にて行われ、3夜のうち順番は抽選で決定された。27日(金)は赤組が開幕、青組が締め、28日(土)および29日(日)は青組が開幕、赤組が終演を務める。
地域ごとの色分けは明確であるものの、その境界を越えて応援する人も散見される。青組の牙城であるパルマレス地区には、赤組の「飛び地」が存在し、商人エラニルソン・ゴメス氏が主導して装飾が施された。その象徴として赤の繊維製牛が地区の中心に据えられている。
これに対し、青組の領土であるバイシャ・ダ・シャンダ地区には、赤組とは異なる色彩を用いる家が存在し、同地区在住の青組支持者であるエジソン氏は近隣への敬意から旗を掲げていない。近隣住民もまた相互に配慮し、激しい対立ではなく敬意と共存の精神を保っている。
このように、パリンチンスの島における伝統的な色分けと対抗心は根強いものの、異なる支持者同士が敬意を持って共存する文化的土壌もまた共に存在する。長年にわたる歴史と深い信仰に支えられた本祭典は、単なる競技の域を超え、島の住民の生活と精神風土を映し出す重要な文化的指標となっている。