
南部サンタカタリーナ州の観光地プライア・グランデ市で21日(土)早朝、21人を乗せた熱気球が飛行開始からわずか4分後に炎上・墜落する事故が発生した。約45メートルの上空から飛び降りた4人のほか、機体内で炎に包まれた乗客を含む8人が死亡。その緊迫した様子は動画と共に世界中にニュースとして配信された。23日付G1など(1)(2)(3)が報じた。
事故は、峡谷や断崖が連なる景勝地で、「ブラジルのカッパドキア」とも称される人気の熱気球飛行地域で発生。熱気球は午前7時頃、同市カショエイラ地区から離陸したが、離陸直後にバスケット中央の操縦士席付近から出火。火元は、離陸時の加熱に使うバーナーとみられ、操縦士は「消えていたはずの火が何らかの理由で再着火した可能性がある」と証言している。搭載されていた消火器は作動せず、火の勢いは急激に広がった。
気球は当初、緊急降下を開始し、操縦士を含む13人が、高度が低い地点で次々と飛び降りて脱出した。軽くなった機体は再び上昇し、約45メートルの高さで4人が火を逃れて飛び降りるも、落下の衝撃で命を落とした。最後までバスケットに取り残された4人は、強まる火災に巻かれ、焼死した。
事故機を運航していたソブレヴォアール社は、2024年9月から営業を開始し、地元自治体より営業許可を得ていた。当該気球は最大27人、または2870キログラムまでの搭載能力を有していた。同社は声明で「弊社は民間航空監督庁(ANAC)の定める全ての基準を遵守しており、過去に事故歴はなかった。操縦士は豊富な経験を有し、乗員の救助に尽力したが悲劇を防ぐことは叶わなかった」と述べた。事故を受け、同社は全運航を無期限で停止した。
生還した13人のうちの一人、ヴィクトル・コレアさんは当時の状況について、「強烈な熱気に襲われ、逃げ場がなく、パニックの中でただ祈るような気持ちで飛び降りた。着地地点が泥で覆われていたため、衝撃が和らぎ命を救われた」と語った。同乗していたパートナーのライス・パエスさんは「初めての熱気球体験で、最初は何が異常なのかもわからなかった。ただただ必死だった」と振り返った。
事故現場には科学警察、ANAC、航空事故調査機関の技術者らが派遣され、気球の構造や火災発生の経緯、消火装置の不備などについて詳しい鑑識が進められている。
事故は国際的な注目を集め、各国主要メディアが相次いで報じた。米『ニューヨーク・タイムズ』は、「ブラジル南部で熱気球が飛行中に炎上し8人死亡」と速報し、サンタカタリーナ州のジョルジーニョ・メロ知事による「州は深い悲しみに包まれている」との声明を紹介。アルゼンチンの『クラリン』は「炎上する気球から乗客が飛び降りる悲劇的瞬間を捉えた映像がSNSで拡散され、大きな反響を呼んでいる」と記述。英『BBC』は「事故現場は山間部で、数人の乗客が空中から身を投じて命を落とした」と報じた。
現在、プライア・グランデ市では熱気球関連の全活動が一時的に中断されており、地元当局は安全基準の見直しと再発防止策の検討を進めている。