路上生活母娘が偶然の再会=20年ぶり、知らずに育んだ友情

母クリスチアネさん(左)と娘ヴィトリアさん(右)(12日付G1サイトの記事の一部)
母クリスチアネさん(左)と娘ヴィトリアさん(右)(12日付G1サイトの記事の一部)

 路上生活を送る女性2人が偶然出会い、互いの素性を知らぬまま友情を育んでいた。だが、実はその裏には20年も離ればなれとなっていた母娘の切実な物語が隠されていたことが明らかとなり、多くの人々の関心を集めている。12日付G1など(1)(2)が報じた。
 サンパウロ州カンピーナス市内にある路上生活者支援シェルターで出会ったのは、クリスチアネ・ドゥアルテ・ダ・シルヴァさん(41歳)とヴィトリア・ドゥアルテ・マシャードさん(21歳)だ。
 クリスチアネさんは約20年前から同施設を利用しており、ヴィトリアさんは2カ月前に入所したばかり。ある日、ヴィトリアさんが「私の母の名前も、あなたと同じクリスチアネなんです」と語ったことをきっかけに、2人は打ち解け、友情を育んでいった。だが、その出会いがやがて思いもよらぬ真実を導くとは、この時はまだ誰も知る由もなかった。
 クリスチアネさんは、継父による性的虐待未遂を機に家を出た。母親の理解も得られず、路上での生活を余儀なくされた。飢えや寒さ、恐怖との闘いの日々に加え、偏見や無関心にも直面してきた。「時にはゴミを投げつけられることもあった」と当時を振り返る。
 その後、ある男性と出会いヴィトリアさんを出産。だが、薬物問題や家庭内不和など複合的な事情から孤立し、母娘は引き離された。以来、クリスチアネさんは娘の安否を案じ続けていた。「夜眠るたびに、娘がご飯をちゃんと食べているか、安全に暮らしているか、誰かに虐げられていないかと気がかりだった」と語る。娘を探し、何度も手紙を送ったが返事はなかった。
 2人の関係が明らかになったのは、EPTV局が路上生活者向けの職業訓練コース卒業式を報じたことが契機となった。今月6日に開かれた第一期生の卒業式で参加者らがガウンに身を包み、学位証書を手にして労働市場への再挑戦を喜び合った。クリスチアネさんもその一人で、感極まって涙する様子がテレビに映し出された。
 その放送を見たヴィトリアさんの叔父が、映像や写真を彼女に送付し、「お前の母親がここにいる」と知らせた。驚いたヴィトリアさんは、実母と同じ施設にいることを知り、急いで会いに向かった。「写真を撮って叔父に見せたら『間違いない』と言われた」と当時の驚きを振り返った。
 母クリスチアネさんは製菓、情報処理、電気工事の講座を修了し、就労支援として必要な器具一式を受け取った。だが、職業訓練コースで受け取った、何より大きなプレゼントは実の娘との再会だった。
 クリスチアネさんには他にも2人の子どもがおり、家族が再び一つになる日を願っている。「路上生活から抜け出し、働いて安心して暮らせる場所を持ちたい」と話している。

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