
中国大手の自動車メーカー「広州汽車集団(GAC)」が5月末、正式にブラジル市場に参入した。BYDやGWMといった急成長中の中国勢との競合を見据え、電気自動車(EV)4種とハイブリッド車1種の計5車種を投入して営業を開始しており、2025年末までに全国で80店舗のディーラー網を構築する方針だ。電動化が進む中、ガソリン車需要が根強いブラジル市場の特性を踏まえ、同社は内燃機関(ガソリンエンジン)搭載のSUVモデルの投入も視野に入れた独自戦略を打ち出しており、その展開に注目が集まっている。7日付CNNブラジルなど(1)(2)が報じた。
GACはすでにサンパウロ州カジャマールに流通センターを開設済みで、今後は三菱自動車と提携し、ゴイアス州カタロンにある同社の遊休工場を活用する形で現地生産体制の確立を目指す。2030年までに累計10万台超の販売を目標に掲げ、電動化技術と内燃機関モデルの両軸で、戦略的市場セグメントへの展開を進める計画だ。
初期投入モデルは、中型ハイブリッドSUV「GS4」、中型電動SUV「Aion Y」「Aion V」、中型電動セダン「Aion ES」、そして高性能電動SUV「Hyptake HT」の5車種。最も安価な「Aion ES」は16万9990レ(約444万円)からで、各車種は多様なユーザーニーズに対応するよう設計されている。
BYDがEVやプラグインハイブリッド車(PHV)でリーダーシップを確立し、GWMがハイブリッドSUVに注力する中、GACは多様なラインナップを投入しており、さらに〝隠し玉〟としてガソリンエンジンを搭載したコンパクトSUV「GS3 Emzoom」の投入も準備している。
「GS3 Emzoom」は、1・5リットルターボエンジンを搭載し、最高出力152馬力、7速デュアルクラッチ式トランスミッションを組み合わせたモデルだ。ルノーのカルディアン、現代自動車のクレタ、フォルクスワーゲンのニーヴァスといった競合車種と市場での直接競合を見据えている。市場投入時期は未定だが、電動化が進む中国メーカーの中で、あえて内燃機関モデルを重視する同社の戦略を象徴する車種といえる。
GACは、内燃機関車と電動車を併用する柔軟な商品戦略を通じて、ブラジル市場における確固たる地位の確立を目指す構えだ。