
ルーラ大統領は6月4〜9日にフランスを公式訪問する。マクロン大統領との首脳会談をはじめ、仏海軍の原子力潜水艦基地の視察やユネスコ事務局長との会談、現在ブラジル人が指揮する国際刑事警察機構(インターポール)本部訪問などが予定されていると、29日付CNNブラジルなど(1)(2)が報じた。
今回の訪問でルーラ氏はデジタル空間の規制とソーシャルメディアのガバナンス強化を国際社会に訴える考えだ。マクロン氏も民主主義防衛に向けたデジタル環境の規制強化を主張しており、首脳会談ではこのテーマが主要議題の一つとして取り上げられる見通しだ。
南仏トゥーロンに位置する同国最大の原子力潜水艦基地の視察も日程に含まれる。同基地はフランス海軍の地中海戦略における中枢拠点で、核推進型を含む多数の潜水艦が配備されている。今回の訪問は、両国の防衛協力が一層深化していることを象徴しており、08年に締結された潜水艦開発協力(Prosub)に基づき、ブラジルは初の核推進潜水艦建造に向けた技術移転を受けている。
ルーラ氏はフランス学士院での表彰式に出席し、歴史的建築物グラン・パレで開催される「ブラジル年」展を視察する。哲学者ミシェル・フーコーや精神分析家ジャック・ラカンらが教鞭を執ったことで知られるパリ第8大学から名誉博士号を授与される予定だ。
環境分野では、パリ市庁舎前に整備される都市緑化事業「都市の森」の開園式に出席するほか、地中海沿岸のニースで開催される国連海洋会議に参加する。同会議は、海洋資源の持続可能な利用と海洋生態系の保護を目指す国際的枠組みであり、ブラジルは沿岸域保全への国際的資金支援の拡充、違法漁業対策、プラスチック汚染防止などの強化を訴える。
訪問の最終日にはリヨンのインターポール本部を訪れ、昨年から事務総長を務めるブラジル連邦警察のヴァルデシー・ウルキザ氏と面会。同氏選出には、ルーラ氏が外交的に支援した経緯がある。
ユネスコのオードリー・アズレイ事務局長との会談も予定されており、SNS上の誤情報拡散やヘイトイトスピーチへの対応を目的とする国際的な規制枠組みの必要性について協議が行われる見通しだ。ユネスコは6月初旬にパリでこの問題をテーマにした国際会議の開催を予定し、ルーラ氏の滞在期間と重なることから両者の対話が注目されている。
ルーラ氏は昨年もユネスコ主催の会合にビデオメッセージを寄せ、デジタル空間が「無法地帯」とならぬよう、国際ガバナンスの構築を求めていた。
今回のルーラ氏訪仏にあわせ、パリの象徴エッフェル塔がブラジル国旗の緑・黄にライトアップされる予定。同塔の特別照明は極めて限定的な機会に限られている。外交・防衛・文化・環境の各分野にわたる今回の包括的な日程は、ブラジルとフランスの友好と協力関係の一層の強化を象徴するものと受け止められている。