
南米チリは、弾道ミサイルの搭載が可能な潜水艦戦力を有する中南米唯一の国として国際的な注目を集めている。2025年の軍事ランキングにおいて、同国海軍は仏英と並ぶ4隻の攻撃型潜水艦を保有しており、その実力は伝統的な軍事大国ドイツや北朝鮮をも凌駕している。チリは戦略的抑止力と海洋資源保全の両面で、地域海軍力の象徴的存在となっていると25日付イタチアイア紙(1)が報じた。
チリ海軍が運用する攻撃型潜水艦はトムソン型2隻とスコルペヌ型2隻で、中南部の軍港タルカワノに配備されている。これらは敵の中枢地域を攻撃できる戦略的抑止力であり、全てディーゼル・エレクトリック方式(SSK)で、うち2隻は空気非依存推進(AIP)を搭載。AIPの導入により潜航時間が延長され、作戦範囲と隠密性が大きく向上した。
2023年末〜24年初頭にかけて、チリ海軍はスコルペヌ型潜水艦をフアン・フェルナンデス諸島沖の排他的経済水域(ZEE)に展開し、中国漁船団の動向監視と違法漁業の抑止を目的とした監視活動を実施した。同海域はユネスコの生物圏保護区に指定される豊かな生物多様性を誇り、中国漁船団は毎年エクアドルのガラパゴス諸島からマゼラン海峡へ移動し、イカなどの乱獲を行い海洋資源に甚大な影響を与えている。(2)
当時の海軍海洋権益局の漁業海洋資源部長ロドリゴ・レペ中佐は、「これは国家政策の一環として海洋資源管理と違法漁業防止のために継続的に行われる重要任務だ」と述べ、海軍の役割の重要性を強調した。
チリは約200万平方キロメートルに及ぶ世界第10位の広大な排他的経済水域を有しており、外国漁船による違法漁業は長年にわたり、フアン・フェルナンデス諸島の安全保障にとって最大の脅威だ。24年1月にはチリが海洋生物多様性保護に関する国際条約「国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)」を批准し、同条約の事務局をバルパライソに置く意向を示すなど、環境保護と海洋資源の持続可能な管理においても世界的なリーダーシップを発揮している。
一方、ブラジルでは海軍の潜水艦開発計画が新局面を迎えている。(3)08年にフランスと調印した潜水艦開発計画(Prosub)により、スコルペヌ型潜水艦「リアシュエロ」2隻を受領済みで、残る2隻も26年までに進水予定。現在は同じく仏ナヴァル・グループと、ブラジル初の原子力潜水艦建造契約の締結に向けた交渉が進んでいる。
だが、年間約20億レアルという予算では2034~35年の就役は難しく、予定通りの進捗には年間10億レアルの追加が必要。ブラジル海軍は老朽艦の退役により、28年までに艦艇の約4割を失う見通しで、代替計画も未定のままだ。
ブラジル海軍司令官マルコス・オルセン氏は、軍予算の国内総生産(GDP)比率を2%に引き上げる憲法改正案を支持し、ジョゼ・ムシオ防衛相は1・5%案を提示しているが、議会審議は停滞している。原潜が完成すれば、ブラジルは米英露仏中印に次ぐ7番目の保有国となる見通しで、国内での燃料生産や地上試験施設を通じて技術成熟が図られている。