
18日付G1など(1)(2)によると、SNSを通じて広がる「ブラジル領ギアナ」ミーム(ネット上で拡散される風刺的な画像)が、ポルトガルとブラジルの間に新たな文化的摩擦を引き起こしている。このミームは、ポルトガルをあたかも欧州大陸に存在するブラジル領土であるかのように扱う趣旨の冗談で、かつての植民地支配という歴史的構図を逆転させたパロディだ。実在する「フランス領ギアナ」になぞらえ、「ブラジル領ギアナ」と名付けることでブラジルとポルトガルの関係性を風刺的に描き出している。
ここ数カ月間SNS上で拡散されており、ポルトガルを「ブラジルの28番目の州」や「欧州にあるブラジルのかけら」と呼称したり、ポルトガル人のアカウントに対して「我々は皆ブラジル人だ」といったコメントを残すといった形で表現されている。
このミームに対して次のようにポルトガル人らが反応し、一部のコメントは一線を越えており、偏見を助長しかねないと警鐘を鳴らしている。
ブルーノ・オリヴェイラ氏は、自身も冗談を楽しむタイプだと述べつつも「文化や民族、国家、そして国旗について語る際には、必ず限度というものがある。これは悪意ある行為であり、もはや冗談の域を超えている」と指摘。
ブルーナ・フィリパ氏は「ブラジル領ギアナ」というミーム自体には嫌悪感を抱いていないとしつつも、ブラジル人がポルトガル人の訛りについて言及する様子は〝恥〟だと指摘し、「私はブラジル人を愛している。ただし、このような言動は、さらなる軋轢を生むだけ。自分たちを受け入れてくれた人々、その言語、その国家を侮辱し、ファヴェーラ(スラム街)と同一視するような発言はあまりにも無礼だ」と強調。
別のポルトガル人もこの件に対して反論し、「ブラジルこそが欧州連合への加盟を望み、ユーロを自国通貨として使いたがっているではないか」と皮肉を交えた上で、「大西洋の片側にブラジルがあるなら、それで結構。我々はこちら側にあるポルトガルがあれば十分だ。ポルトガルがいつかブラジルの一部になるなどという幻想は捨てた方がいい」と主張した。
一方、インフルエンサーのノカス氏もユーモアを交えて動画を投稿し、「最初は金に関するミームだった。ポルトガルが植民地時代にブラジルから砂金を盗んだっていう内容。その後、我々が時代遅れのポルトガル語を話しているとか、先史時代のポルトガル語を使っているというものが登場した。そして今度は我々が〝ギアナ〟ときたか? ブラジル人の創造性はすばらしいね」と嫌味を込めてコメントした。
とはいえ、かつてのポルトガルによるブラジルの植民地支配や、ポルトガル国内でブラジル人が現在も受けている差別に比べれば些細なものだと主張する声もある。ポルトガルの人種差別撤廃委員会の調査によると、ポルトガルでは2021年、ブラジル人に対するゼノフォビア(外国人嫌悪)に関する苦情が109件寄せられた。これは2018年と比較して142%の増加となった。
その内容は賃貸契約の締結困難、就業の障壁、医療サービスの利用制限といった目に見えにくい差別から、ポルトガル語ではなく英語を話すよう要求されること、さらには露骨な侮辱や身体的暴力に至るまで、広範にわたっている。