
サンパウロ市中心部ブラス地区の公立病院で、医師が家庭用電動ドリルを使用して整形外科手術をする様子を収めた動画が拡散され、物議を醸している。この工具の使用は国家衛生監督庁(ANVISA)によって禁止されており、映像にはドリルに血痕が付着したまま使用されている様子や、電気コードがむき出しになっている場面が映っており、安全性が懸念される。工具の洗浄に使われている食器用洗浄剤も規定違反とされ、衛生的に問題があることが指摘されていると5日付G1など(1)(2)が報じた。
問題のノッサ・セニョーラ・ド・パリ病院は、整形外科専門病院として2002年に設立され、無料の統一医療保健システム(SUS)に基づく治療を提供している。
グローボ局取材に対して匿名で応じた同病院職員は、「院内のドリルは医療用ではなく、壁を貫通させるための一般的なもので、全部で7本程ある。中には電気コードに絶縁テープを巻いて補強しているものや、医師が自ら修理を施したものもある」と証言。骨を貫通させる手術で、そのドリルを使用しているという。
さらに同職員は「病院の備品購入の担当者が『安いから』という理由でそのタイプを買っている。メンテナンスも安上がりだとも言っていた」と話した。
家庭用ドリルを手術で使用することは、健康に重大なリスクをもたらすとして、2008年からANVISAによって禁止されている。同庁が2017年に発行した技術文書40号には「家庭用ドリルは回転の制御が効かない。骨を削ることで、骨の粒子を工具の内部に巻き込む可能性があり、正しく機能しなくなるリスクがある。この工具は滅菌できず、潤滑油により汚染が広がる可能性がある。感電防止の十分な安全対策が施されていない」との禁止理由の記載がある。
バイク事故により、2020年に同病院で手術を受けた男性が、その後右腕の可動域を失い、病院を訴えたことがあった。被害者のエドゥアルド・サントスさんは「手術中、切られる感覚や穴を開けられる感覚など全てを感じていた。ひどい体験だった。右腕が動かせないので仕事はない」と語った。
エルトン・フェルナンデス弁護士は、これは医療ミスとして分類される可能性があると指摘し、「科学や医療の規定に反する、全ての専門職の行為は医療ミス。公的医療システムだからこそ専門医が適切でない手段を用いることを許容してはいけない」と述べた。
さらに、使用されている洗浄剤が脱脂用の食器洗い洗剤であることも確認された。製造元のウェブサイトには「宿泊施設や中規模ホテル、レストラン、厨房などに最適」との記載がある。
グローボ局は、同病院の管理監督を担当する機関に問い合わせを行ったが取材に応じなかった。病院側は「使用されている家庭用ドリルはANVISAに承認されており、定期監査を受けている」と主張している。
州保健局は病院が自治体管理下で完全な自律性を持ち、衛生監視機関が定期的に検査を行っていると発表。医師会は監査部門を動かし、調査を開始した。
一方ANVISAはこの件は市の管轄下だと説明。サンパウロ市役所は「病院への正式な苦情はなく、問題が確認されれば契約解除の可能性がある」と述べ、衛生許可証は州の責任であると付け加えた。