ブラジル司法が説明求める=メタ社監視基準変更受け=デマ拡散の容易化を懸念

フェイスブックやインスタグラムを所有する米IT大手のメタ社が7日、米国での第三者による投稿内容の正確性を検証する「ファクトチェック」を終了すると発表した。これを受け、ブラジル当局は一様に懸念を表明。検察庁サンパウロ州支部(MPF―SP)は同社に対し、米国での監視基準の変更がブラジルでも適用されるのか否かについて、詳細な説明を求める通知を送ったと、8日付G1など(1)(2)(3)(4)が報じた。
メタ社は7日、米国を皮切りに、従来行っていたファクトチェックを廃止していくと発表し、今後はユーザー自身が投稿内容を修正・訂正する機能を導入する方針を示した。この機能は、イーロン・マスク氏が運営するXの「コミュニティノート」に類似したもので、ユーザーが他の投稿に対して事実関係の訂正や補足を行える仕組みだ。
MPFは、従来のブラジルでのコンテンツ監視方針との違いを明確にし、またその基準変更がデマ情報やデジタル空間での暴力にどのように影響するかを明確にするために、同社に詳細な情報提供を求めた。同庁は、特に「軽微な違反」についてはユーザー自身の通報や修正が中心となるため、その影響を慎重に評価する必要があると考えている。
メタ社はまた、コンテンツに対する監視基準も「重大な違反」に絞り、軽微な違反についてはユーザーからの通報に依存する方針を発表。さらに、ユーザー自身が投稿内容に対して修正を加える機能が追加されるため、これまではメタ社自身が積極的に介入していたコンテンツ削除の基準が緩和される可能性が示唆されている。加えて、今後はより多くの政治的コンテンツの制限が緩和されると発表しており、一部ではトランプ次期大統領への迎合とも受け取られている。
MPFはこれらの変更がブラジルの現行法とどのように調和するのかを調査しており、情報の自由と安全をどのように守るのかについて、重要な問題提起を行っている。特に、メタ社が発表した変更がデマ情報の拡散を助長し、ユーザー間の信頼性を損なう結果となる可能性についてを懸念している。
一方、連邦総弁護庁のジョルジ・メシアス長官は、メタ社の変更が情報の混乱を助長し、情報秩序を悪化させる恐れがあると警告。メタ社のマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)の発言は、マスク氏の「表現の自由」や、最高裁(STF)に対する「秘密の削除」の指摘と共鳴すると述べた。
また、連邦警察のアンドレイ・ロドリゲス長官は、これらの変更が1月8日の三権中枢施設襲撃事件のような犯罪行為を悪化させる可能性を示唆し、ビッグテック企業の役割に関する法的規制の必要性を強調した。
STFのアレシャンドレ・デ・モラエス判事は、ソーシャルメディアがブラジルの法律を無視することは許されないとの立場を改めて強調。同判事は、企業の影響や「無責任な」意見があろうとも、ブラジル国内で運営される企業やその行動は、国内法に基づいて処理されるべきだと主張し、法的枠組みと規制強化の必要性を訴えた。STFは昨年、X側との司法判断を巡る対立の中で、同社のプラットフォームに対するアクセス停止措置を取った経験がある。
このような方針変更に対しては、メタ社内部でも賛否が分かれているという。ザッカーバーグ氏は事実確認者のイデオロギーの偏りを指摘し、「信頼の回復が必要だ」と述べている。また、第三者によるチェックに依存しなくなれば、「悪質なコンテンツの発見は減少するが、無実の人々の投稿やアカウントが誤って削除されるケースも減るだろう」と説明している。