ボルソナロ「142条適用議論した」=憲法解釈問題で抗弁=79年同様の恩赦求める

ボルソナロ前大統領は、2022年の大統領選後、三権混乱時に軍が調停役を担えると解釈する専門家もいる「憲法142条」の適用に関して軍と話したことを認め、現在は最高裁に対し、恩赦を求めたい意向であることを主張している。その一方で、ルーラ氏暗殺計画の容疑者である軍の高官たちが証言を始めたことで、ボルソナロ陣営が恐れ始めてもいる。29日付CNNブラジルなどが報じている。
21日に書類送検され、連邦警察の報告書ではアウトゴウペ(政権側からのセルフ・クーデター)に関し、「全体を把握し、自身も積極的に関与していた」とされているボルソナロ氏が、28日に雑誌オエステ誌のインタビューで現在の心境を語った。
その取材で、秩序を破壊するための行動を起こそうとしたのかとの質問を受けたボルソナロ氏は、「憲法142条に関しては軍と相談した」と答え、戒厳令の一つで国が危機的な状況下での行使が認められている「エスタード・デ・シッチオ」もしくは「エスタード・デ・デフェーザ」を使おうかと話したことを認めた。
ボルソナロ氏は、「私がクーデターを狙おうとしているとは2019年から言われているが、それはいつも法律の範囲内でのことだ」と語っている。(1)
軍の役割を規定する憲法142条には「それらは祖国の防衛、憲法上の権力の保障、そしてこれらのいずれかの主導による法と秩序の保障を目的としている」とあり、それが一部の軍人や法律家の間では「国家間の紛争の際の調停権力としての軍事介入を正当化する」と解釈されている。そのため最高裁は今年4月になって「142条にそのような意味はない」と満場一致の判断を下した。(2)
ボルソナロ氏はさらに、「伯国を平和にするためには誰かが折れなくてはならない。それはアレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事だ。連邦議会は1979年に、人を殺したり、爆弾を仕掛け、誘拐し、盗み、ハイジャックをした人たちを許した。モラエス判事やルーラ氏から恩赦の言葉が出れば、すべてが解決する」と語り、恩赦を求めた。
1979年の恩赦法は政治犯の犯罪の恩赦と同時に、軍側による政治犯の殺害や誘拐などに対しても恩赦を行ったことでも知られている。
ボルソナロ氏は現在連邦議会に提案されている1月8日襲撃事件の恩赦法の制定を望んでいるが、最高裁前で起きたボルソナロ派の男性の最高裁襲撃未遂・自爆事件以降、恩赦法制定は困難との見方が強まった。ルーラ大統領の労働者党(PT)はこの法案をお蔵入りさせるよう強く求めている。
一方、ルーラ氏、モラエス判事、ジェラルド・アルキミン副大統領の暗殺を目論んでいた容疑者たちが証言を始めている。その中の一人で陸軍中佐のロドリゴ・ベゼーラ・アゼヴェド容疑者は、28日に連邦警察で3時間の事情聴取を受けた。
この他、主犯とされ、前政権時の大統領秘書室ナンバー2だった陸軍大将のマリオ・フェルナンデス容疑者を始め、この計画に関与した他の4人の容疑者も証言に応じるのではないかとの憶測も流れている。(3)
それに対し、28日付CNNブラジルによれば、ボルソナロ氏はこの報告書を「もう一つのフィクション(虚構)」だとし、「退役将軍、士官4人、連警エージェント1人がクーデターについて話すのは別の悪い冗談だ。そして全体として、何の証拠もまったくない。彼らはブラガ・ネット、エレーノを捕まえたいのではなく、私を狙っている。彼らにとって私が悪者であり、民主主義の最大の悪であると考えている」と付け加えた。