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豚肉輸出増への協力求める=ABPA、商議所と会談

2024年7月26日

山口貿易部会会長(左から3人目、サンチンABPA会長(中央左)、尾崎食品部会会長(中央右)
山口貿易部会会長(左から3人目、サンチンABPA会長(中央左)、尾崎食品部会会長(中央右)

 日本の輸入豚肉相場の高騰を受け、ブラジル日本商工会議所(商議所)とブラジル動物タンパク質協会(ABPA)が6月25日、サンパウロ市のABPA本部で会談を行った。ABPAは日本への豚肉輸出増を希望し、商議所から日本への前向きな働きかけを望んだ。

 会談には、商議所貿易部会長の山口久和氏、同食品部会長の尾崎英之氏、同事務局の日下野成次氏、ABPAのリカルド・サンチン会長らが出席した。
 現在、ブラジルは「生鮮冷凍鶏肉」で日本の7割以上の供給シェアを持つ。安価な鶏肉は日本のインフレ抑制に貢献している一方で、冷凍豚肉については1割にも満たない。
 要因は牛、豚の口蹄疫等の家畜病が懸念されているからだ。ブラジルでは予防策や家畜衛生ステータスが州ごとに異なり、現在はサンタカタリーナ州の豚だけが日本への輸出を許されている。ただ、同州の豚肉生産量は限界に達しているため、今後の伸び代は期待できない。ABPAは、同州と同様の衛生ステータス・生産体制があるパラナ州と南大河州に着目し、この南部2州を加えることで輸出増を狙う考えだ。
 現在、日本はブラジル以外にアメリカやヨーロッパから豚肉を輸入している。近年はこの国々の生産量が減るなどして日本への輸出が減少する傾向となっている。こうした供給減から値段が上昇しており、ブラジル南部2州からの輸入が解禁されれば値上げも抑制される見通しだ。
 牛、豚、鶏肉の内、日本での消費量は豚肉が最も多い。牛肉は高価なので少なく、鳥は豚より安いため消費量が多い。豚肉は年間200万トン弱の需要があり、うち半分が国産。豚肉生産のコストの7割は飼料代(トウモロコシ)だが、日本はその全てを輸入しており、飼料をほぼ自給自足できるブラジルの倍のコストをかけて生産している。ブラジルは世界で最も豚肉生産コストの低い国だ。
 ただ、もしブラジルからの輸入が増えれば、日本の生産者への打撃は少なくない。日本政府は農家を守るため、キロ523円以下の豚肉が入ってこられないようにする差額関税制度を導入している。ただ、この『防波堤』は自由貿易に反するとして世界中から非難されているため、現在は差額関税制度を少しずつ緩めている状況だ。
 日本は豚肉の輸入先と自由貿易協定を結んでおり、アメリカやヨーロッパ、チリなどの国々とは差額関税制度内での優遇税制でここ数年対応している。ブラジルは日本との自由貿易協定は結んでいない。
 国産肉は豚も鶏もコストが高いため、ブランド肉として外国産と差別化している。輸入した安い肉は加工品に回されており、国産とのすみわけができている。輸入肉が加工品としてではない状態で販売される場合には「黒豚」などのようにブランドを強くし、付加価値の高いものを提供していく戦略が必要になると見られている。
 輸入解禁には、農水省の12のステップを通過する必要がある。最も時間がかかるのは書類審査で、通過すると現地視察が行われる。その後、日本で審査会が行われる流れだ。ブラジルは現在、ステップ3の書類審査の段階だが、今年11月のG20に首相からの輸入ステップ促進の『手土産』をブラジル側は期待。一方で年内に全てのステップを通過するのは厳しいとも見ている。
 今回の日本への豚肉輸出解禁が上手くいけば日本の消費者、外食産業、貿易会社やブラジルの豚肉業界など広い分野で恩恵を受けることが見込まれる。商議所は日伯ビジネスのさらなる発展に協力するため、日本国内の豚肉生産業者へ配慮しつつ、豚肉輸出解禁に協力していく意向だ。
 ブラジル産鶏肉が日本の鶏肉のインフレを抑制していることは間違いない。日本では昨年よりも鶏肉が安くなっているが、豚肉は3割以上値上がりしている。南部2州からの輸入が解禁されれば更なるインフレ抑制への貢献が期待される。また、ブラジル側は豚肉に限らず、あらゆる食料の輸出を望んでおり、まずは豚肉輸出を促進したい考えだ。


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