リオ・グランデ・ド・スル州大水害で九死に一生=赤子抱えて屋根の上3日間

アントニーくんが救出される瞬間(左)と母ナターシャさん(右)(13日付G1サイトの記事の一部)
アントニーくんが救出される瞬間(左)と母ナターシャさん(右)(13日付G1サイトの記事の一部)

 リオ・グランデ・ド・スル(RS)州大水害によって孤立した家屋から、5カ月の乳幼児含む家族全員が救出された。赤ちゃんの母親ナターシャ・カリーネ・ベッカーさんが、グローボ局報道番組「エストゥージオi(Estúdio i)」にリモート出演し、壮絶な被災状況を語り、救出から10日経った現在でも「まだ実感が湧かない」と打ち明けた。13日付G1サイト(1)が報じた。
 被害が甚大なタクアリ川の沿岸の町、ラジェアード市で被災したナターシャさんは「自宅が倒壊してしまい、家族3世代、10人が家を失いました。私たちは今、夫の叔母の家に身を寄せています。1つの部屋に5人で寝泊まりし、寄付に頼って生活しています」と説明した。
 救出当日、家の中には彼女と生後5カ月の息子アントニーくん、夫、義父母、そして息子の代親(キリスト教における後見人的続柄)がいた。一家は小舟を使って浸水した家の中にとどまり、身を守っていた。その日はとても寒く、雨が降り続き、短時間で水位が上がったため、一家は屋根の上に避難し、助けを呼ぶしかなかった。
 「こんなことが1日のうちに起こるとは、誰も予想していませんでした。そんな中でもアントニーは母乳を飲んでくれたから、少し安心しました。やがて水道も止まり、義母が屋根を伝ってミカンを取ってきてくれて、それを二つ食べて耐えることができました」と振り返った。
 一家は3日間、水、電気、食料がない状況で、屋根に開けた穴の中で交代しながら過ごした。「私はいつもアントニーを抱いていました。絶望の淵に立たされたとき、誰も信じられなくなるのです。万が一、息子が水の中に落ちてしまったらと思うと誰にも任せられませんでした」と語った。
 ヘリコプターの音が聞こえ、ナターシャさんは急いで赤ちゃんを屋根の外に出し、危険にさらされている子供がいることを救助隊員らに知らせた。
 「すぐに隊員が降りてきてくれて、屋根を伝ってヘリコプターに乗り込む方法を説明してくれました」と話し、救助隊員の迅速で効率的な連係プレーのおかげで、一家全員が無事救出され、それぞれ異なるヘリコプターで安全な場所まで運ばれた。
 「全員がヘリコプターに乗り込んだ直後、家が倒壊しました。今、私たちは生きていくために、皆さんからの寄付に支えられています」と話した。
 彼女は現在、再出発にむけて何をすべきか考えているという。「まだ実感が湧かず戸惑っています。少しずつ私たちには帰る場所がないことに気づいています。でも私たちは元気です。みんな生きていて、健康です。神様に感謝です」と力強く語った。

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