《記者コラム》マドンナのリオコンサート=40年来のファンの本音

フリー・ライブでのマドンナ(Rafa Catarcione)

 4日、リオのコパカバーナ海岸で行われたマドンナのフリー・コンサートが世界中で話題となった。「160万人動員」という数字自体は、デモの動員人数などでもよくみられる「吹っ掛け」の数字で、実際にそれだけの人数がいたとは個人的には思わない。だが、映像に映し出されたまるで米粒のようなおびただしい人の数には、実際の人数が何人かなど、どうでもよくなるほどのインパクトがあった。

 ブラジルメディアはどこも「さすがはマドンナ」との絶賛記事ばかりだ。だが、彼女がデビューして比較的間もない頃からずっと見ている、基本的に彼女のファンであるコラム子があの公演をどう思ったか。率直な気持ちを綴りたいと思う。
 まず正直なところ、「ほっとした」というのが本音だ。というのも、一般的に誰が聞いても知っている彼女のヒット曲は、2005年の「ハング・アップ」を最後に20年近く出ておらず、以降4枚のアルバムはファン以外へのアピールが少なかった。おまけに最近は整形手術の失敗で容姿をからかわれ、「自分の伝記映画を作る」とプロデュースを自ら買って出たが頓挫したりと踏んだり蹴ったりだった。
 そんな矢先に久しぶりに彼女がライブ・パフォーマーとしての貫禄を示すことができたのが嬉しかった。ファッション・ショーのスタイリッシュさを取り入れた大掛かりなセットと照明、多数のダンサーたちによる一大スペクタクルのショー。ロックバンドに思い入れがなく、ビヨンセやテイラー・スウィフトのような女性ポップスターを当たり前にして育っている若い世代に対して「そうした今に繋がる音楽シーンを作った存在こそマドンナなんだよ」と思わず言いたくなるような名人芸的手腕だったように思う。
 ただ、こと「マドンナ自身のライブの仕方」に関して言えば、実はここ20年ほど演出も進行もほとんど変わっていないことも事実だ。メインは踊りながらのヒット曲披露で、時折、彼女自身がギターを手にとって生歌の熱唱を披露する。このパターンは21世紀に入ってからのツアーではずっと定番で、これを知っている立場からすれば、「もうすこし変化があっても良いのでは」とも思った。特にダンス・メインのシーンはマイクに声が入っておらず、一部ネットでは「マドンナ、口パクか?」と話題になっていた。踊りながらの歌唱は難しいとはいえ、後続の音楽シーンに良い影響を与えない部分であるのは確かなので、ここは修正しても良い気がした。
 あとは、やはり彼女自身による久々のヒット曲が欲しい。現在、66歳。容易ではないものの、奇跡を期待させるのも、またマドンナなのだ。(陽)

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