囚人文学アカデミーの誕生=栄えある第1席にCV首領

ABLCの第一席に選出されたマルシーニョVP(Divulgação/ABLC)
ABLCの第一席に選出されたマルシーニョVP(Divulgação/ABLC)

 リオ・デ・ジャネイロで18日、囚人や元囚人の文学活動を奨励することを目的とする「ブラジル囚人文学アカデミー」(ABLC、Academia Brasileira de Letras do Cárcere)の創設式典が行われ、6人がメンバーに選出された。これは文学界の最高権威「ブラジル文学アカデミー(ABL)」の囚人版として刑事弁護士グループが設立したもの。作家グラシリアーノ・ラモスの名を冠した第一席には、リオ市を本拠とする国内最大級の犯罪組織「コマンド・ヴェルメーリョ(CV)」首領の一人であるマルシーニョVPが選ばれたと18日付テラ・サイトなど(1)(2)(3)が報じた。
 マルシーニョVPこと「マルシオ・ドス・サントス・ネポムセーノ」は、組織犯罪、マネーロンダリング、麻薬密売、殺人などの罪で50年以上の禁固刑を言い渡され、1996年からマット・グロッソ・ド・スル州カンポ・グランデの連邦刑務所に収監中だ。
 彼は獄中で『戦争捕虜(Preso de guerra)』『凡庸な犯罪処刑の解説(Execução penal banal comentada)』『マルシーニョ—真実と立場(Marcinho — Verdades e posições)』の3冊の本を書き上げた。
 マルシーニョVPは就任宣誓のために刑務所から出ることができなかったために、家族が代理を務めて式典には彼の母親、妻、弁護士らが出席した。
 ABLCの設立を推進した弁護士で元判事のシロ・ダルラン氏は、囚人が独房内で読書をする習慣があることに目をつけ、これは刑期短縮にも役立つと指摘。刑執行法によれば、独房内で読書をする囚人は、図書館の書籍を読んで書評を書けば刑期が4日短縮される。この法律では年12冊までという制限があるため、受刑者は最高年48日間まで刑期を短縮することが可能だ。
 シロ氏は「同アカデミーの目的は、受刑者や元受刑者が書いた本の執筆と読書を奨励することであり、彼らの社会復帰と、拘禁刑に服する人間の価値を高めることにある」と声明を出した。彼は判事時代に、息子の顧客を優遇した疑惑で強制退官させられた過去を持つ。「ABLCの発足はブラジル文学の多様性と包摂を大切にするための重要な一歩だ」と続けた。
 ABLCには20席があるが、マルシーニョVP含め現在はまだ6席のみ埋まっている。発表された他の5人は以下の通り。
 かつてCVとPCC(州都第一コマンド、サンパウロ市拠点の犯罪組織)の両方に関与していた、ファビオ・ダ・オーラ・セラは『芸術家になった悪人(O Bandido que Virou Artista)』を執筆。
 アンドレ・ボルジェスは1958年に武装強盗で逮捕され、21年間の服役中に21冊の本を執筆した。エジルベルト・ジョゼ・ソアレスは幼少時から孤児で、犯罪に手を染めた後、20年間を刑務所で過ごす中で詩人としての才能を見出し、『詩の最後の叫び(Último Grito da Poesia)』を発表。
 エメルソン・フランコは19歳で逮捕され7年間服役したが、その後社会学部を卒業し、現在は教職に従事。パウロ・エンリケ・ミリャンは麻薬取引の元受刑者であり、刑務所内で4冊の本を執筆し、自身の出版社を立ち上げた。

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