《記者コラム》猛犬に襲われ重傷の作家=病室で詩を詠むほど回復

ロゼアナ氏(©Secretaria Municipal de São Sebastiao)

 15日、猛犬に襲われ、片腕、片耳を失った児童文学作家のロゼアナ・ムライ氏が病室で事故後、初めての詩を詠んだとの報を見た(15日付アジェンシア・ブラジル(1)参照)。
 猛犬に襲われたのは、5日朝6時頃。リオ州ラゴス地方サクアレマ市に住む彼女は、いつものように散歩に出た直後、隣人が飼うピットブル3匹に襲われた。
 17日朝のニュースによると、悲鳴を聞いて駆け付けた人達も猛犬を追い払えず、最低でも10分間、犬達のなすがままとなり、約5メートル引きずられたが、刃物を持って来た男性のおかげで犬達が飼い主の家に逃げ込んだため、救助できたという。
 ヘリコプターで病院に運ばれ、右腕を切断。右耳もかみ切られていた彼女が、数回の手術を経て闘う姿は、連日のように報道されていた。
 そんな彼女が入院11日目に集中治療室で介護中の妹に向けて詠んだ詩は、「天使が一人 家の中から悲しみを一掃してくれた 私達が知らない何かで作った翼で 通りや広場を掃除するのと同じように掃き 全てを手中に集めると 吹いて 吹いて 吹いた」という、穏やかで、希望も感じさせるものだった。
 病院は全ての人が天使である場所と言う彼女の詩からは、自分を襲った犬や、犬を虐待し、より獰猛となる原因を作った隣人への恨みや怒りは感じられない。
 詩について報じた記事には逆に、「亡くなったばかりの人をあの世に送り届ける3頭の獰猛犬ケルベロスの神話を思い出し、3匹の犬が自分を死の世界に連れて行こうとしているように見えたけど、私は生きている。ナスターシャ・マーティンの『獣の声を聞いて』では、クマに襲われ、戦って勝ち、半分人間、半分クマとなった女性がいるが、私も半分人間、半分は野獣の女性だと感じている。私は戦って勝ったのだから」「この病院は特別な家。看護師達の話を聞き、自分のことも話す中で、銀河のような愛を交わしている。ケルベロスから得た強さと、半分人間で半分野獣という経験は自分の精神力を高めてくれる」といった言葉が続いている。
 死も覚悟したことや、医師達も驚いた生命力の強さを感じさせる言葉だが、彼女は病院で詩の夜会を開き、自分の世話をしてくれた人全員に、自分の著書に左手で署名し、プレゼントしようと考えているという。
 息子のグガ氏が作家でジャーナリストのアレッサンドラ・ロスコー氏と立ち上げている「担保美人省(Ministério das Belezas Colaterais)」という運動についても、「最悪のシナリオであっても美を追求する、それが私達の仕事。平和は何ものにも勝る」と語るロゼアナ氏。ニジア・トリンダーデ保健相からは、「ケルベロスの攻撃に驚き、貴女の生命力の強さと統一医療保健システム(SUS)に対する認識に感動しました。本を通して貴女のことを知っていましたが、今はもっと称賛しています」という手紙も届いているという。
(み)

(1)https://agenciabrasil.ebc.com.br/geral/noticia/2024-04/roeana-murray-escreve-primeiro-poema-no-hospital-apos-ataque-de-caes 15日

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