《記者コラム》水よりも、今は停電が心配なサンパウロ市

停電中のサンパウロ市(Paulo Pinto/Agência Brasil)

 3月が終わった。それはつまり、雨期の終わりも意味する。例年、水不足に悩むサンパウロ市だが、今年はその問題も回避されたようだ。1月から3月はコンスタントに200ミリ前後の雨が降り、3月末の時点で主要貯水池の水位は安定水域の60%をゆうに超える75%以上を記録。当面はサンパウロ市の水不足を心配する必要はなさそうだ。

 ちょうど10年前の2014年、サンパウロ市は未曾有の大渇水に見舞われた。10年前のことと思うと隔世の感がある。当時は雨期であるにもかかわらず月間の降水量が100ミリにも満たなかった。こんなことは、その後10年間で1度も起こっていない。最大水系のカンタレイラの水位は14年5月に15%にまで低下し、地下の予備水を使うことで給水制限を回避した。しかし、この回避策をしている間も水位は回復せず、実質的にはマイナス29・2%まで水位が落ち込んだ。この時はコラム子もかなり真剣に水不足を心配したものだった。
 2015年2月に300ミリの雨が降ったあたりから降水量が本格的に戻り始め、15年年末には水位が0%まで回復した。それから順調に推移し、今日では予備水の分を抜いてなお、80%前後まで水位を伸ばしている。大自然の治癒力の強さをこういう時に強く感じる。
 だが、一難去ってまた一難。今、サンパウロ市民は水不足を心配することはなくなったが、今度は「電力」が不安になっている。昨年の11月に210万世帯を困らせた大停電。コラム子もまる3日間、電気のない生活を余儀なくされ、長い人では1週間も復旧に時間がかかった。あれは今でもちょっとしたトラウマであり、悪夢だった。
 停電に対する電力供給企業「Enel」の責任を問う声は強く上がったが、同社が真摯な対応を行ったという話は聞かれることなく、その後も今年1月、そして3月に大規模な停電が発生した。特に3月の停電は市の産業の中心である中央部で発生し、数日間にわたり様々な地区で問題が引き起こされ、再びEnelの存在がクローズアップされた。
 これにはリカルド・ヌーネス市長もおかんむりの様子で、同市長はEnelの話題が上がるたびにライセンスの取り消しを示唆する発言を行っている。市長自らがこういう発言を繰り返し行っていること自体が異常事態だ。
 Enelは現在、都電CPTMと並ぶ、民営化失敗例として頻繁に挙げられ、揶揄される存在となってしまっている。サンパウロ州は現在、サンパウロ水道局(Sabesp)の民営化もしようとしている。「せっかく水不足が解消されたのに」との危惧をどうしても覚えてしまう。(陽)

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