自称「革命家」シェリジエは何者?=ハイチ首相辞任させた犯罪組織ボス

「バーベキュー」ジミー・シェリジエ(Foto: Bremps,via Wikimedia Commons)
「バーベキュー」ジミー・シェリジエ(Foto: Bremps,via Wikimedia Commons)

 【既報関連】中米ハイチのアリエル・アンリ首相が11日に辞任を発表したのは、首都の80%以上を支配するギャング団による内乱発生を避けるためだったと報じられた。同国内にはギャングが200余りおり、中でも最も影響力を持つ通称「バーベキュー」ジミー・シェリジエについて15日付テラ・サイト(1)が詳細を報じた。
 米国と国連から人道に対する罪で告発されているシェリジエ(47歳)は元警官で、最も恐れられているギャングの一つ「G9ファミリー」を率いる。自らを「革命家」や「ロビンフッド」「貧民の保護者」と称して正義を謳う一方で、手段を選ばない荒々しさも注目を浴びている。
 彼は無償の教育や食料や雇用など、より公正な国の未来を公約し、「今国を解放するための闘いが行われている。人の命は尊く、被害者には同情する。しかし、闘いには副作用がつきものだ」とコロンビアのラジオ局Wのインタビューで述べている。
 首都ポルトープランスではギャング団の支配権をめぐる争いが激化し、貧困街での被害は甚大だ。国連によれば1月は過去2年間で最悪の月となり、800人以上の市民が殺害や誘拐、負傷した。
 バーベキューは、キューバのフィデル・カストロやハイチのフランソワ・デュバリエといったカリブ海の独裁者と自らを比較することがよくある。だが彼は多くの違法取引に関与しており、たとえ彼が権力を握っても状況が改善される可能性はほぼないと専門家は指摘する。
 彼は2018年末に警察を解雇、複数の虐殺に関与したとして告発され、20年には九つのギャング団を集めた武装集団「G9ファミリー」を設立した。現在このグループは政府打倒を目標に、宿敵のギャング団GーPEPと手を組んで「Vivre Ensemble(共に生きる)」運動を形成している。
 「バーベキュー」というあだ名は、彼の母親が路上で鶏肉を売っていたことに由来するとか、彼が関与した家屋への放火と犠牲者の死体に由来するという説もあり、実際のことは分からない。
 2018年に首都ラ・サリーン地区で起きた70人以上が死亡した虐殺事件も、彼の一味の仕業だと考えられている。米国によると、この事件は政治的反対意見を弾圧するための警察と犯罪集団の連携攻撃だった。
 その罪により、シェリジエは米国と国連安全保障理事会から深刻な人権侵害で告発され、いくつかの国際制裁の対象となった。市民に対する直接的犯罪に加え、彼は燃料供給に対する妨害行為や首都の港を封鎖し、ハイチの人道危機を悪化させたことでも告発されている。
 彼はメディアの注目を浴びることを好み、インタビューを受けることも多い。その際は常に薄い青のスーツを着用し、ネット上には迷彩の戦闘服や防弾チョッキを着用し、武器を携行している写真も見られる。
 彼及び取り巻きはハイチ警察よりも重武装しており、兵器の多くは米国からの密輸だ。暗殺されたジョブネル・モイズ大統領と関係があり、その死後、政府の資金提供の削減がギャングの活動をエスカレートさせたとされている。彼自身は否定しているが、その行動からは「政治的な立場」に関心を持っている可能性が指摘されている。

最新記事