□訃報□作家の醍醐麻沙夫さん

醍醐麻沙夫さん

 作家の醍醐麻沙夫さん(本名:広瀬富保(とみやす))が20日朝、前立腺がんの悪化によりサンパウロ市内の病院で亡くなった。行年89歳。20日午後7時から9時にヴィラ・アルピーナ墓地で通夜が行われた。初七日法要、四十九日法要は現時点で未定。
 醍醐さんは1935年1月3日に神奈川県横浜市で生まれた。学習院大学文学部美術家卒。日本のビッグジャズバンド「スマイリー小原とスカイライナーズ」でサックスを担当。その一方で、美術活動の一環として横浜展に彫刻作品を出品、入選を果たし、将来の美術活動のため海外へ出ることを決意。1960年、オランダ船チャチャレンガ号で移住した。
 ブラジル移住後は美術ギャラリー店、衣料洋品店などの経営の傍ら音楽活動も行い、美空ひばりブラジル公演の際にはサックス伴奏を担当。サンパウロ市に「コロニア文学」という同人誌が発行されると、文学に目覚めた。
 1970年「聖人たちの湾」で群像新人賞候補作。1974年に「「銀座」と南十字星」でオール読物新人賞受賞。1975年「夜の標的」で直木賞候補。サンパウロ新聞文学賞を受賞した平野植民地を描いた代表作小説「森の夢」を1979年に同社から出版。1991年「ヴィナスの濡れ衣」でサントリーミステリー大賞佳作など。
 日本で出版した著作だけで『原生林に猛魚を追う』(講談社、1981年)、『南半球のザ・ジャパニーズ ブラジルにおける日本人の適応』(文藝春秋、1981年)、『森の夢 ブラジル日本人移民の記録』(冬樹社、1981年)、『「銀座」と南十字星』無明舎出版(1985年)など26冊。主に移民史、アマゾンの釣りに関する小説や、伝奇推理小説を書いた。
 2008年の日本移民百周年を記念してウェブサイト「ブラジル移民文庫」(https://www.brasilnippou.com/iminbunko/)を企画。貴重な移民史著作をPDF版で読めるようにした。2015年に外務大臣表彰を受賞した。

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