ブラジルの大学受験=長野育ちの日系4世の挑戦(12)=ABC連邦大学に繰上り合格!

合格者リストに記載された自身の名前を嬉しそうに指さす松永エリケさん

 ブラジリアのABC連邦大学の補欠合格者発表が27日に行われ、朝からスマホに張り付いて、大学サイトに繰上り合格者リストが掲載されるのを待った。午後8時、待ちくたびれながらサイト表示の更新ボタンを押すと、何の前触れもなく合格者リストが表示された。
 不安と期待が一瞬にして湧きあがり、心臓がドキドキと音をたて、口の中が一気に乾いた。合格者はアルファベット順に並べられている。恐る恐るリストを手繰り、エリケの「E」の欄まで来た。
 「名前がある!!!」合格していた。一人喜びを噛みしめた後、すぐに父へ伝えた。今回の受験は、日本の高校在学中に父からかけられた「高校卒業後は伯国の大学に進んでみるのもいいのでは?」との言葉がきっかけだった。
 在宅勤務中だった父は「おお、おめでとう」と喜び、肩を叩いて祝福してくれた。しかしその直後には「それで次はどうするんだ?」とお祝いモードから一転して心配モードに。おそらく父としては、安定した職に着くまでは気は抜けないということなのだろう。
 続けて、日本に住む母や親族、受験に協力してくれた人たちへ合格の報告を行った。皆合格を喜んでくれた。
 ABC連邦大(Universidade Federal do ABC)は2006年に設立され、サンパウロ州サントアンドレ市とサンベルナルド・ド・カンポ市にキャンパスを持つ。連邦大学なので学費は無料だ。同大では、リベラルアーツ教育を採用しており、専攻と違う科目も学ぶことが出来る。世界中の大学と協定を結んでいて、日本だと芝浦工業大学と協定を結んでいる。
 私は6月からサントアンドレ市のキャンパスに通い、サイエンス・テクノロジー協同学部の学生になる。興味のあるバイオテクノロジーや生物医学を勉強するのが楽しみだ。
 ポルトガル語の読み書きレベル、ほぼゼロの状態で始まった今回の大学受験。1年間の努力の末、連邦大学に受かるまで頑張った自分を褒めてやりたい。
 喜色満面、浮かれた様子で過ごしていると、受験を応援してくれていた人から「人生上手くいきすぎてない? もう少し苦労したほうがいいよ」と釘を刺された。成功の喜びが落ち着いたら、必ずいつかは来る挫折と向き合う心の準備もしておこうと思う。
 受験連載は、私と同じく結果発表待ちだった予備校仲間の紹介を行う次回で本当の最終回となる。ありがたいことに当連載がブラジルの受験事情を知るのに役立ったとの感想を頂いた。機会があれば、これからの大学生活での体験も連載記事にして、役立てられたらと思う。(松永エリケさん、続く)

最新記事