トヨタ110億レ投資巡り=連邦と州政府で功績争い?!

左からアルキミン副大統領、タルシジオ・サンパウロ州知事、ルーラ大統領(Foto: Ricardo Stuckert/PR)
左からアルキミン副大統領、タルシジオ・サンパウロ州知事、ルーラ大統領(Foto: Ricardo Stuckert/PR)

 【既報関連】ジェラルド・アルキミン副大統領兼商工開発相(ブラジル社会党・PSB)とタルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事(共和者・RP)は5日、サンパウロ州内陸部のソロカバ市にあるトヨタ自動車の工場で行われた110億レアル(約3340億円)の投資発表セレモニーに出席した。
 この投資は、ハイブリッド車とスポーツ用多目的車(SUV)の生産を開始するソロカバ工場拡張のためで、2千人の雇用創出が見込まれている。同投資には昨年来のサンパウロ州政府による交渉があったとされ、連邦政府がその功績を横取りしようとしているのかと注目されていると同日付CBNなど(1)(2)が報じた。
 2026年までに50億レアル、30年までにさらに60億レアルが投資されると発表された。タルシジオ・サンパウロ州知事によると、エンジン生産をするポルト・フェリス市の同社工場にも投資が回されるという。
 2千人の雇用を産むこのトヨタの新投資には当初、ブラジルとメキシコが候補地に挙がっていた。そこで昨年10月、サンパウロ州政府代表団が取引交渉のために東京に向かい直談判した。そこで信頼を築き、サンパウロ州財務局から税制優遇措置が提案されたため、投資先はサンパウロ州に確定した。
 この情報はリークされ、アルキミン副大統領は政治的利益を得るチャンスに飛びつき、先手を打った。トヨタが公式発表する前の3日、アルキミン氏は自身のSNSでトヨタ新投資と関連付けて「ブラジルとルーラ大統領の功績」を称え、自身が率いる商工開発省が考案した「緑のモビリティと革新(Mover)プログラム」と、同じく連邦政府が推進する「未来燃料プログラム」を賞賛した。
 この投稿はタルシジオ州政府に不快感を与え、サンパウロ州政府と連邦政府のどちらが「トヨタ投資の親」であるかを巡って、当日両者が言い争うとの予測もあった。
 だが投資発表時、アルキミン副大統領は「努力の積み重ねだった。ブラジルは重要な局面を迎えており、多くの企業が投資を発表している」とし、連邦政府とサンパウロ州政府の間に争いはないと述べた。
 一方、サンパウロ州知事も両政府間の相乗効果を強調し、各々がこの好機を生かす努力をするだろうと述べるにとどめる〝大人の対応〟をした。
 トヨタ自動車によると、新投資によって生産をソロカバ工場に集中させ、同州インダイアツーバ工場の事業は2025年中旬から段階的に移行され、26年末までに閉鎖となる予定だと発表した。(3)

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