リオ貧民街からパリ一流シェフに=ルーヴル美術館レストランに抜擢

アレサンドラ・モンターニュ・シェフと彼女が手がける料理(12日付オ・グローボ・サイトの記事の一部)
アレサンドラ・モンターニュ・シェフと彼女が手がける料理(12日付オ・グローボ・サイトの記事の一部)

 カリオッカ(リオ出身)のアレサンドラ・モンターニュさん(46)は、フランスのパリで活躍する実力派シェフだ。パリのマレ地区にある「Tempero」「Nosso」という2軒のレストランのシェフ兼オーナーで、ブラジリアン風味を加えたユニークな料理と才能が高く評価され、フランス3局のテレビ番組「Le goût des rencontres culinaires(料理との出会いの楽しみ)」の司会者にも抜擢された。
 彼女は世界的天才シェフと称えられるアラン・デュカス氏から最近直々にオファーを受け、ルーヴル美術館内レストランの刷新プロジェクト「デュカス・エクスペリエンス」のメンバーに選ばれた。リオ貧民街で生まれた彼女のサクセスストーリーを、10日付オ・グローボなど(1)(2)が紹介している。
 アレサンドラさんはリオ市の貧民街ヴィジガルで生まれ、すぐに母親から祖父母に引きとられ、ミナス・ジェライス州内陸部のポテ市で育てられた。「質素な生活だったわ。祖父母は『母は死んだ』と言っていたけど、私が11歳の時に急に母が玄関先に現れたの。怖くて、恥ずかしくて、茂みに隠れてしまった」と振り返る。
 「私は言うことを聞かない野蛮人とみなされ、寄宿学校に入れられた。そこで縮毛であることを理由にいじめられた」。ポテ市に戻った後16歳で妊娠、結婚を強要された。「私は道徳的、感情的、財産的、性的な暴力の被害者だった。私は息子のアンドレを決して見捨てないと誓った」と壮絶な過去を語った。
 母親とスイス人の継父が住む仏パリに行くために、彼女はコシーニャ(ブラジル風チキンコロッケ)を作って売りお金を貯めた。
 「初めてエッフェル塔を見たとき、私はここで人生をやり直すんだと思った」と振り返る。ゼロスタートした彼女だが、ゼ・キッチンのウィリアム・ルドゥイユ氏、ヤム・チャのアデリーヌ・ガタール氏、最年少でミシュラン三つ星を獲得したアラン・デュカス氏といったスターシェフたちに可愛がられ、キッチンで全てを学んだ。
 デュカス氏は「アレサンドラがいてくれて本当に幸運だ。彼女は素晴らしいシェフで、愛情をもって料理する方法を教えてくれる女性だ」と絶賛。
 食を通して教育や健康を推進するNGO団体「ガストロモチーヴァ」のダヴィジ・ヘルツ氏は「アレサンドラの物語は、料理が人生に革命を起こす可能性を証明するものだ」とコメントしている。
 300人収容予定のこの新レストランは、パリ五輪後、美術館内のピラミッドの前にオープン予定だ。一般に、美術館のレストランは高くてまずいという評判がある。そのため、いかにリーズナブルな価格で質の高い料理を提供できるかが課題だ。アレサンドラさんは環境に配慮し、地元の生産者と協力して、料理においても持続可能な実践を取り入れたいと話している。
 店名やメニューはまだ明らかにされていない。だがブラジル風の装飾、建築、食器、メニューなど準備はすでに整っている。彼女は「より親しみやすい、ビストロスタイルのキッチンになるでしょう。来場者には壮大な芸術作品を見て心が満たされ、同時に美味しいものを食べてお腹も満足して帰ってもらいたい」と語った。

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