《記者コラム》「建て直し監督」でセレソン蘇るか?

ドリヴァル・ジュニオル氏(SPFC)

 10日、サッカーブラジル代表(セレソン)の新監督に、ドリヴァル・ジュニオル氏が就任し、注目を集めた。ジュニオル氏の抜擢自体は不思議なことではない。同氏の名前は、2014年の自国開催でのW杯以降は常に選択肢の一つとしてあったからだ。注目されている理由は、その就任が非常事態下でのものとなったからだ。

 代表監督人事を巡っては当初、「初の大物外国人監督」として期待されていたレアル・マドリッドのカルロ・アンチェロッティ氏が就任を断り、控え候補の国内監督、フェルナンド・ジニス氏が監督代行を務めたが、その采配は不調が続いた。
 ジニス監督代行は、フルミネンセを南米一位に導き、セレソンでもその手腕が発揮されることを期待されたが、セレソンの南米予選の結果は奮わず、所属するフルミネンセもクラブW杯決勝で木っ端微塵に惨敗するなど、大きな国際試合で通用しない何かがあった。
 一部サッカーファンからは、こんなことなら元フラメンゴのジョルジェ・ジェズス氏、パルメイラスのアベル・フェレイラ氏といったブラジルサッカーですでに実績を上げたポルトガル人監督にしておけばよかったのにとの声が上がっている。正直なところ、コラム子も思う。そのことは前回のW杯後の当コラムでも提言している。
 だが、悔やんでいる暇はない。目の前の建て直しが先決だ。不幸中の幸いに、ドリヴァル氏は「窮地にあるチームの建て直し」に定評がある。同氏は過去に何度も全国選手権で2部落ち危機のチームを途中就任ながら救っている。代表監督就任前に率いていたサンパウロも然りだ。
 コラム子がドリヴァル氏に期待しているのは、2009年、サントス監督時代に見せた手腕だ。この年、ドリヴァル氏は当時20歳だったガンソ、17歳だったネイマールを主力起用してブレイク。彼らを一躍ブラジルサッカー界期待の星にした。
 この時の手腕を、現在18歳のヴィットール・ロッケ、17歳のエンドリックの2人に発揮して欲しいのだ。前者はバルセロナにすでに入団、後者は7月にレアル・マドリッド移籍と、ブラジルサッカー界の未来の得点源として期待されている。
 2人は、セレソンへの招集経験こそあるものの、まだ主力としては起用されていない。2人の成長を考えると、W杯が開催される2026年には戦力として絶対に不可欠な存在となっているはずだ。そのための下地を作ることこそが、急務であり、それができれば26年大会のみならず、その先の30、34年大会までセレソンは安定したチームが組めるだろう。
 もしこれができなければ、今度こそはポルトガル人監督となるだろう。(陽)

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