最恐犯罪組織「悪魔教団」=刑務所支配した残忍なカルト

90年代に撮られたカランジルー刑務所の内部(20日付UOLサイトの記事の一部)
90年代に撮られたカランジルー刑務所の内部(20日付UOLサイトの記事の一部)

 かつてサンパウロ州の刑務所内で最も恐れられた組織「悪魔教団(Seita Satânica)」――メンバーは悪魔崇拝者で、その特異な信仰によって勢力拡大し、影響力のある犯罪組織として猛威を振るった。その知られざる実態について20日付けUOLサイト(1)が報じた。
 悪魔教団は1960年代後半から存在しており、93年にイデルフォンソ・ジョゼ・デ・ソウザ受刑者がカランジルー刑務所に収監された後に組織化され、勢力を拡大した。同刑務所は当時ラ米最大、最悪として知られていた。彼は「神父」と呼ばれて崇拝され、教団を犯罪者集団に仕立て上げ、他の刑務所にも勢力を広めた。
 この組織は強烈な悪魔崇拝を実践し、残忍な儀式によって刑務所内で独特の存在感を持っていた。メンバーは極悪人が集まる第9棟4階など、特定の場所に集まった。独房内を黒く塗り、666という数字(聖書の黙示録が示す獣の数字)や悪魔の絵などで飾られ異教的な儀式の場となっていた。
 元刑務官で、受刑者の行動を監督していたロナウド・マゾット・リマ氏はUOLの取材に対し、「彼らの独房内には供え物用の器、ろうそく、悪魔のシンボルなど儀式に使われる道具があった。不快な臭いや666の数字、暗い色の服、血のついた容器まであって嫌悪感を抱いた。同僚たちもこれに触れるのを恐れていた」と振り返る。
 リマ氏は、メンバーらがいた監獄内ではタバコや葉巻、そして有名な「マリア・ロウカ(刑務所内で囚人たちによって密かに生産されているブランデー)」の香りが充満していたと話す。「彼らの手には火傷の傷が頻繁に見られた。これは悪魔を喜ばせるための儀式でろうそくや葉巻の炎で焼かれたもので相当深刻な傷だった」と話す。
 刑務官のディオルジェレス・デ・アシス・ヴィクトリオ氏は、「特に印象的だったのは、穴の開いたペットボトルから漏れる強烈な臭いで吐きそうになった。昔、陸軍で色々な特殊訓練を受けたことがあるが、あの独房の過酷さとは比べものにならなかった。この穴開きペットボトルはシャワーとして使われていたが、中身は水ではなく、人間やネズミなどの血だった」とし、血祭りの儀式に使われていたと説明した。
 冷淡な性格で知られるイデルフォンソ受刑者の指導下で、メンバーたちは敵対者に対して非常に残忍な行為に及び、首や心臓を切り裂くといった残虐な行為が行われ、臓器は儀式で食べられていたとされる。
 刑務所内に広がっていたカルト宗教と他の派閥との間の見かけ上の調和は、同じく刑務所内で勢力をつけた犯罪組織網「首都第一コマンド(PCC)の台頭とともに崩れ去った。PCCは現在、南米最強の犯罪者集団の一つにのし上がった。刑務所内での権力闘争が激化し、悪魔教団のメンバー数は大幅に減った。
 「ブラジル犯罪派閥の抗争史は、血なまぐさい争いの歴史だ。カランジルーでは、PCCと悪魔教団の対立が死と流血をもたらした。このカルト宗教の信者数は減ったが、その存在は根強く、サンパウロ州内陸部の複数の刑務所では、今でも定期的な活動があることを示す懲戒違反が記録されている」とヴィクトリオ氏は言う。
 イデルフォンソ受刑囚は20年近い服役の後、2010年に自由の身となっており、UOLによると現在の所在は分からないという。

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