Sabesp=サンパウロ州議会が民営化承認=デモと野党投票拒否の中=「画期的な日」とタルシジオ

6日、サンパウロ州議会でサンパウロ水道公社(Sabesp)の民営化に関する法案への投票が行われ、承認された。直前に反対派の市民たちが抗議運動(デモ)を行い、野党議員らが投票をボイコットする波乱の中での決定だった。同日付カルタ・カピタル(1)やG1サイト(2)(3)などが報じている。
Sabespの民営化はタルシジオ・デ・フレイタス知事(共和者・RP)が昨年の知事選キャンペーンの時から主要公約として主張していたものだが、その時から、左派を中心に強く反対する声が出ていた。
投票前日の5日の聖州議会では夜遅くまで、反対する野党議員たちと推進派議員らが激しい口論を展開。投票当日も、州議会前では反対派の市民たちが強硬なデモを行っていた。
この反対デモは、駆けつけた軍警たちとの間での混乱も招いたが、軍警側が催涙ガスを撒くなどして鎮め、社会団体ウニダーデ・ポプラールのリーダー、ヴィヴィアン・メンデス氏が逮捕された。
こうした混乱の後にSabespの民営化の投票が行われたが、野党議員が審議をボイコットしたため、62対1の圧倒的大差で承認された。反対票を投じたのはグラシエラ州議(自由党・PL)ただ一人だった。
聖州議会は94人で構成されており、民営化承認には48人の賛成を得ればよかった。投票数や反対票数が少なかったのは、労働者党(PT)、ブラジル共産党(PCdoB)、社会主義自由党(PSOL)、ブラジル社会党(PSB)、民主労働党(PDT)、レデといった左派政党の州議が投票を一斉にボイコットしたためだ。
この結果にタルシジオ知事は、「サンパウロ州にとって画期的な日だ」と喜び、これを水道衛生向上のための挑戦と位置付けている。
Sabespは現在、サンパウロ州内375市に浄水を提供する公社で、南米では2番目の規模を誇っている。現在は、州が持ち株の50・3%を所有している。
一方、反対派の声も目立っている。サンパウロ市に拠点を置くエリカ・ヒルトン下議(PSOL)は「委員会や公聴会が行われないまま決められた。違憲だ」とし、最高裁に訴える構えを見せている。またエドゥアルド・スプリシー・サンパウロ州議(PT)も「市民の声を聞いての民営化なのか疑わしい」と反論している。
Sabespの民営化に対しては市民からの反対の声も少なくない。その理由の一つは、欧米諸国での水道民営化の失敗だ。6日付BBCブラジル(4)によると、2000〜23年には世界で344件の水道の再公営化例があり、その中にはパリやベルリンのような大都市も含まれている。その理由としては、民営化に伴う水道代高騰化などが指摘されている。
また、パウリスタ都電(CPTM)の民営化線での故障続出や、11月の大サンパウロ市圏での大停電の際の電力供給企業Enelの対応などからも、民営化を恐れる市民の声が目立ってきている。
なお、Sabesp民営化のためには、この後、サンパウロ市議会で関連する市条例を改正し、375自治体との契約内容更新をする必要がある。