商議所昼食会=税制改革への対応を討論=4大会計事務所代表が見解披露

パネルディスカッションを行う天野義仁さん、ヴィルジニア・ピレカンプさん、マリア・フェレイラさん、アンテノール・ミントさん、オルランド・ダルシンさん(左から、提供:Rubens Ito/CCIJB)

 ブラジル日本商工会議所(小寺勇輝会頭)は11月17日、サンパウロ市のインターコンチネンタルホテルで定例懇親昼食会を開催した。今回は「税制改革に企業はどのような対応をすべきか」をテーマにパネルディスカッションを実施。ブラジルに拠点を置く4大会計事務所所属の経済専門家が、年内に可決される見通しの間接税、来年から本格着手される直接税の税制改革への対応について語った。税制改革への対応は日系企業の重要課題であり、会場には満員となる約150人が来場した。

清水享総領事(提供:Rubens Ito/CCIJB)

 冒頭挨拶に立った小寺会頭は、14日に在サンパウロ総領事館に着任した清水享総領事を紹介。続けて、日系進出企業は、グローバルサウスとして国際社会での重要度を増すブラジルとのさらなる連携強化が求められており、「官民の敷居をゼロにした開かれた関係」を結実させる必要性があると語った。
 パネルディスカッションには4大会計事務所所属のヴィルジニア・ピレカンプ(EY)、アンテノール・ミント(デロイト)、マリア・フェレイラ(KPMG)、オルランド・ダルシンさん(PwC)が参加。ファシリテーターを天野義仁さん(KPMG)が務めた。
 パネルディスカッションではまず、11月8日に上院で承認された間接税分類の五つを二つに統合する税制改革法案について取り上げられた。同法案は12月の下院審議で再承認されれば、年内に可決される公算が高い。過去30年にわたり議論ばかりで進展が見られなかった同法案だが、ヴィルジニアさんは「今回はルーラ大統領も既に可決済みとみている」と述べた。

天野義仁さん、ヴィルジニア・ピレカンプさん、アンテノール・ミントさん、マリア・フェレイラさん、オルランド・ダルシンさん(左から、提供:Rubens Ito/CCIJB)

 同法案が可決されれば、今後10年間は旧法から新法への移行期間となり、完全に新体制となるのは2033年からとなる見込みだ。オルランドさんは「移行期には、各社は現状よりも複雑な税務処理を行わなければならず、痛みを伴うこともある」と話した。
 しかし、新体制になった後は、税務手続きの所要時間は現在の約2100時間から国際平均の200~300時間と約90%減少し、税制の複雑さによる訴訟も大幅に減ることが予想される。国外からの投資や新たな企業の進出が見込まれ、GDPは10%上昇するといわれている。
 移行期の複雑な税務手続きのコストを抑えながら乗り切る方法として、専門家へ業務を外注することを挙げ、アンテノールさんは「新法への過渡期には会計専門家のヘッドハンティングが活発になる」と語った。
 また、税率が下がるとは現時点では断定できないが、「ブラジルコスト(ブラジルの成長を妨げる構造、労働、経済など多面的な障壁を指す表現)」の高まる過渡期には、政府が税制恩典などを発布して税負担が高まらない措置を取る可能性もあるとした。
 税制改革を行う政府の原動力は、長年の課題であった会計の透明性や効率化向上に着手したことによって国際的な評価が向上することだという。
 最後に、マリアさんは「不条理な税制で忙しいのではなく、スマートな税制になって新しい事業の税務コンサルで会計事務所が忙しくなることを期待している」と述べ、ディスカッションを締めくくった。
 特別スピーチでは、イタペチニンガ市のジェフェルソン・ブルン市長が登壇。同市でサンパウロ援護協会が運営する病院に、JICAの助成でCTスキャンが寄贈されたことに感謝の意を述べた。

会場の様子(提供:Rubens Ito/CCIJB)

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