「これは私の息子です」=臓器輸送箱指差し父が一言

軍の協力で臓器が運ばれる様子、コンゴーニャス空港(21日付アエロイン・サイトの記事の一部)
軍の協力で臓器が運ばれる様子、コンゴーニャス空港(21日付アエロイン・サイトの記事の一部)

 「一人の男性が近づいてきて、目の前の箱を指差し『私の息子です』と言った。その瞬間、私は言葉を失った。私も一人の父親であり、彼の立場になって考えてみた。彼は『最後の祈りを捧げ、別れを告げたい』と言った。そこにあるのは〝ただの箱〟ではなく、人生であり家族なのだと思うようになった」――このエピソードは、軍警航空司令部(CavPM)の医療部隊所属のロジェリオ少尉が披露した。看護師である彼は、移植用臓器輸送を支援する責任者の一人だ。
 ロジェリオ氏によれば、サンパウロ州ソロカバ市からサンパウロ市へ心臓を搬送するため、チームが病院を出発する際に言われた。彼の計41年のキャリアの中で最も印象的な瞬間だったという。
 ブラジルは臓器移植実施数で、米国に次いで世界で2番目。臓器輸送には、軍警や市警の航空部隊が支援し、綿密な計画と迅速なオペレーションが必須だと、21日付アエロイン(1)が報じている。
 CavPMは医療部隊を通じて臓器搬送について知らされる。要請は州保健局の移植システムに入力され、臓器供給元の情報も収集され、それらを軍警が審査をする。この手続きは効果的な輸送ルートを計画し、移植に適した状態で臓器が到着するようにするために行われる。
 「すべては、搬送される臓器の特性や時間制約に基づいて行われる。臓器ごとに虚血時間(ドナーから臓器を摘出して、血流再開までに許される時間)が異なり、要請がきた段階で既にプロセスにかかる所要時間は決まっている。全員がそれぞれの役割分担のもと、フライト計画を準備する」と、チームコーディネーターのギリェルメ・ヴァイスハプチ大尉は説明する。
 CavPMの協力により、2022年には41件、2023年10月までで既に50件の臓器移植が行われた。
 サンパウロ州政府は、市警による航空戦術サービス(SAT)のヘリコプター「ペリカン」を使った臓器輸送サービスも提供していること強調している。市警と協定を結んでいる移植センターから支援が要請されると、SATは臓器と医療チームを病院まで運ぶ。
 臓器輸送に関する任務は緊急の優先事項とされ、市警のヘリコプターを使用することで、臓器取り出し後の時間を大幅に短縮することができ、移植手術の成功率向上に大きく貢献している。

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