佐々木美智子さんの写真展=新宿ゴールデン街元名物ママで元移住者

作品の前に立つ写真家の佐々木美智子さん

 新宿ゴールデン街の元名物ママ、写真家の佐々木美智子さん(89歳)の写真展「新宿 出逢いと別れ」が、10月22日から11月5日まで、ゴールデン街からそれほど離れていないビルの一室で開催された。
 1934年北海道根室市生まれ。22歳で上京、新宿でおでんの屋台を引いたあと、日活撮影所の編集部に3年間勤務。東京綜合写真専門学校で写真を学び、日大全共闘、映画のスチール写真などを撮る傍ら、新宿ゴールデン街で〈Barむささび〉、新宿歌舞伎町で〈ゴールデンゲート〉などを経営。
 彼女が手にするカメラはニコンやミノルタなどの一眼レフカメラではなく、使い捨てのインスタントカメラ。店に集まる人たちを撮り続け、プリントした写真を拡大コピーするという彼女独特の手法で、その時代に生きる人の素顔を切り取ってきた。
 展示された写真は映画俳優、作家、演劇人など各界の有名人から一般のサラリーマンで、すべて彼女が新宿で出会った人たちだ。
 1979年にブラジルに移住。アマゾンで9年間飲食店やペンソン(旅館)を経営し、88年、サンパウロへ移り、多くの作家と親交のあった彼女は、本を寄贈してもらい私設図書館を創設するなど日系社会とは深いかかわりがあった。
 93年に帰国し、伊豆大島で〈アマゾンクラブ〉を経営する。2013年に東京に戻り、2014年から新宿ゴールデン街に戻り、〈ひしょう〉を引き継ぐ。
 しかし、コロナ禍で閉店に追い込まれたが、この間に、ブラジルで撮影したカーニバルの写真を『SAUDADE サウダージ サンバ! サンバ! ブラジル』(Loft BOOKS)として2021年に出版。
 今回の展示会は北海道・札幌、函館、根室につぐもので、まさに彼女の集大成だ。しかし、彼女は今もインスタントカメラを手放さない。
 「来て頂いた方々の記録を撮らせて頂きます」。彼女は来場した人たちにカメラを向け、シャッターを切っていた。これからも撮り続けるつもりだ。
 「いつも、これで最後と思いながらやってきました。こうなったらあと百回の最後を目指します」。展示会の説明にはこう記されていた。(取材・執筆/高橋幸春)

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