■記者の眼■羽田空港入管で観光気分に〝冷や水〟=「帰国支援?なら別室へ」

羽田空港の第2ターミナル出発ロビー(MaedaAkihiko, via Wikimedia Commons)

 「帰国支援策でブラジルに帰った方ですか?じゃあ、担当者を呼びますので別室へお願いします」――9月末にブラジル人の日本への観光ビザ入国がフリーになったのを受け、さっそく訪日した若い日系人が東京国際空港(羽田)の入国カウンターでそう呼び止められ、耳を疑ったとの声が編集部に聞こえてきた。
 その男性は最初、入国カウンターの職員と日本語で楽しく話していた。ところが「親がデカセギで訪日して、自分は日本で生まれ育ちました。2009年に日本政府の帰国支援策でブラジルに家族と一緒に帰りました」という言葉に対し、職員からはサラリと「では担当者を呼びますので別室へ」と言われたという。
 それまでの明るい雰囲気の会話から一転、別室では取り調べのような厳しい雰囲気になったという。その日系男性は3週間程度、日本国内各地を仕事で回った後、帰国する予定だった。
 「帰国支援策」は、2008年末の世界金融危機による外国人労働者大量解雇を受けて、日本政府が09年に打ち出した政策だ。帰国費用を支援するという呼び水に誘われて、ブラジル人を中心に2万人余りが帰国した。今回の若い日系人は当時まだ子どもだったその一人だ。
 羽田空港の別室では、担当者から「日本にきた目的は何ですか?」「帰国用の航空券を見せてください」「いつまで滞在する予定ですか」などと聞かれた。
 その挙句「帰国するお金がなくなったとかいって、また2009年の帰国支援のような制度を要望されたら困るんですよね」とフレンドリーに言ってきたという。
 日系男性は、「とてもショックを受けた。せっかく久しぶりの日本を観光気分で堪能しようと思ってきたのに、初っ端から冷や水を頭にぶっかけられた気分…」と肩を落とす。
 せっかく観光ビザが免除になり、これから多くのブラジル人が観光に押しかけようとしている時に、「帰国支援で帰った日系人は別室へ」では興ざめだ。日系人も今や観光やビジネスで日本へ行こうとしている。これでオモテナシの態度と言えるのだろうか。(深)

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