「彼女は私の中で生き続ける」=腎移植待ちの夫の命救った妻

マリオさんとシベリさん(3日付ア・トリブナの記事の一部)
マリオさんとシベリさん(3日付ア・トリブナの記事の一部)

 サンパウロ州南部クバトン市で9月22日、脳卒中で52歳の若さで亡くなったシベレ・アウグスタさんが、10年間腎臓移植の順番待ちをしていた夫マリオ・ルイス・ダ・シルヴァさん(58)の命を救った。二人は30年間連れ添ったおしどり夫婦だった。3日付ア・トリブナ紙(1)が報じている。
 10年前、マリオさんは腎臓に重篤な疾患があることが判明。「検査の結果、私の片方の腎臓は活動しておらず、もう片方も7割近くの機能が失われていた」と振り返る。
 マリオさんは治療を開始、血液透析も定期的に受ける必要があった。それでも二人は人生を楽しもうと決意し、一緒に旅行に出かけ、愛する人との幸せな時間を楽しんだ。しかし病気はマリオさんの体を蝕み続け、歩けなくなるまで悪化してしまった。
 当時、夫婦は母親の世話をするためにミナス・ジェライス州に住んでいたがサンパウロ州に戻り、サントス市のサンタカーザ病院で治療に専念することになった。月、水、金と血液透析に通うこと約5年。
 マリオさんは治療中の血圧変動、痛み、不快感など困難な日々を送った。自分と同じような闘病生活を送る人々と苦悩を共にし、「他の人の痛みに敏感になる。血液透析は大きな進歩だが、同時に大きな苦しみでもある」と説明した。
 彼が居住する地域で腎臓病患者をサポートする機関を探したが見つからず、妻の勧めもあって、2年前に自分で「腎臓患者支援センター」を設立した。だが多くの患者が治療を諦めてしまうなど様々な困難に直面し、プロジェクトは行き詰まった。
 マリオさんによれば、多くの患者は辛い治療に向き合う内に人生を諦め、闘志を失ってしまう。「私はいつも前向きだったが、病気を受け入れない人もいる。透析機器の前で過ごす長い時間は辛い」と説明する。
 シベレさんは夫の闘病生活を支え、寄り添い続けた。「妻は4年ほど前に腎臓を提供したいと言い出したが、私は受け入れなかった」と思い出す。
 数日前、脳卒中が突然彼女を襲った。集中治療室に搬送され約20日間の治療が続いたが容態は回復せず、親族らはマリオさんの命を救うための移植を決断した。別の患者も彼女のもう片方の腎臓を受け取った。
 マリオさんはシベレさんを思い出すと胸が詰まり、話すことはまだ難しいと言う。30年以上を共に過ごしただけでなく、2人の息子の母でもあり、命を救ってくれたかけがえのない人の死なのだ。
 マリオさんは彼女が最高の伴侶だったと語る。「私たちは知り合った後、3カ月間交際して6カ月目には結婚していた。誰もうまくいかないと言ったが30年間一緒にいた。多くの幸せと喜びを共にした。妻の死は無駄にならない。彼女はずっと私の中で生き続ける」。
 このような経験を経て、マリオさんは臓器提供についての意識を高めたいと考えている。「臓器提供についての経験を話し、啓発を促すことはとても重要だ」と締めくくった。

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