沖縄県人会=連邦政府に謝罪の見直し請願へ=サントス強制退去など移民迫害に=政権変わって可能性浮上で

11日に県人会館で話し合いをもった宮城さん、上原さん、奥原さん、島袋さん(左から)

 大戦前後の日本移民迫害を巡って、奥原マリオ純さんが2015年12月に損害賠償を伴わない謝罪要求を法務省アネスチア委員会に起こした件に関して、22年6月に同委員会が請求を却下していたことが先ごろ分かった。今年から政権が変わったことから、謝罪請求の見直し請願を出すため、11日に沖縄県人会で準備会合がもたれた。折しもブラジル沖縄県人移民研究塾同人誌『群星』8・9号合併号やサントス強制立ち退き特集号の英語版も完成したことから、連邦政府への働きかけに拍車がかかりそうだ。

 連邦政府への謝罪請求に関し、ブラジル沖縄県人会は18年4月の定例役員会で支援することを全会一致で決めていた。中々その審議が進まないことに業を煮やし、19年12月11日、ブラジル沖縄県人会の上原ミウトン定雄会長(当時)、島袋栄喜元会長、宮城あきらブラジル沖縄県人移民塾代表は、奥原さんと共にブラジリアに赴き、アネスチア委員会の担当弁護士2人に請願書を渡して説明したところ、通常は15分で終わるはずの面談が、2時間も長引きかなりの手ごたえを感じた。
 同文書には《連邦政府は「スパイ通報」という無実の罪を着せられた私たちの先人たちに対し、今日に至るまで謝罪の言葉もなく、無言のままであります。連邦政府は、過去の幾多の困難を克服して、民主主義を標榜する新しい国家建設を目指している今日、過去の歴史を振り返り、汚名を着せられ差別的な人権抑圧を強いられてきた全ての日本人移民・沖縄県移民に対し、その名誉回復に真摯に向き合うべきことを切に思うのであります。私たちは、連邦政府が2度とあのような忌まわしい過ちを繰り返さないために、退去を命じられた沖縄県人移民を含むすべての日本人移民の名誉回復のために政府としての謝罪を強く願い訴えるものであります》と書かれている。
 だがアネスチア委員会はボルソナロ政権になってから法務省から人権・家族・女性省へと移管され、委員長はフラビオ・ボルソナロ上議の政治補佐官になり、委員の多くが軍関係者に入れ替わった。そして昨年6月、7対2で却下されていたことがこのほど分かった。奥原さんは「普通なら委員の前で直接に主張をする機会が設けられるのに何もなかった。いきなり却下されたと連絡が来た」と残念そうに語った。
 11日、首都へ説明に行った4人が県人会に再び集まり、再請求を行うことを申し合わせた。奥原さんは「もう一度ブラジリアへ行って説明する」と力を込めた。請求書の内容にも手を加え、サントス強制立ち退きに関する記述を増やすと意気込む。
 また上原さんも「今回こそチャンスがありそう。いつでもやる」、島袋さんも「政権が変わって今回は可能性があるかも」と話した。宮城さんも「『群星』英語版をカナダや米国の日系団体に送って、運動を広げる」と意気込んだ。
 『群星』8・9号合併号には昨年10月に開催された世界のウチナーンチュ大会の総括に加え、映画『オキナワサントス』の上映会報告、感想文、証言などが掲載されている。さらに同誌の中心メンバーだった故上原武夫への追悼文、「戦争と移民」をテーマにした4人分の寄稿などもあり、読みどころの多い内容となっている。日ポ両語で264頁となっている。
 宮城さんは「アラサツーバやカンポ・グランデからも送ってくれという要望が入っている。若者からも読みたいという声を聞いた。刊行し続けることでブラジル社会に徐々に反響が広がっていることを実感し感動している」と述べた。
 『群星』に興味がある人は沖縄県人会(電話11・3106・8823)まで。10月15日にはサントアンドレ市のうるま会館で『オキナワサントス』上映会予定。『群星』も販売される。

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