アルゼンチン=首都が略奪頻発で治安悪化=大統領選挙前に不安高まる

略奪が横行し警察が警備を強化、パタゴニア州バリローチェ市の様子(23日付フォーリャ紙サイトの記事の一部)
略奪が横行し警察が警備を強化、パタゴニア州バリローチェ市の様子(23日付フォーリャ紙サイトの記事の一部)

 アルゼンチン国内の治安悪化が深刻化し、首都ブエノスアイレスやその周辺では政治的な混乱と結びついた略奪事件が150件以上も発生。逮捕者も出ていると24日付ガゼッタ・ド・ポーボなど(1)(2)が報じている。当局はソーシャルメディアで集められた窃盗集団による計画的な犯行とみている。
 アルゼンチンは経済危機に直面しており、年間インフレ率が100%を突破。物価上昇率が世界で最も高い国の一つだ。13日の大統領予備選挙では有力視されていなかった極右候補のハビエル・ミレイ氏が1位となり、政界が大揺れしている。
 この混乱の中、セルジオ・マッサ経済相が国際通貨基金との合意に基づき、公式為替相場でドルの価値を21%切り下げると発表し、440億ドルの融資を解除すると発表した。だが、経済危機対応策の一環として行った決定は多くの国民から批判を浴びた。専門家は8月と9月に2桁の物価上昇を予想しており、貧困率は全人口の約40%に達しているとされている。
 ブエノスアイレス州治安局長のセルジオ・ベルニ氏は地元テレビ局「C5N」のインタビューで、少なくとも40人が組織的な略奪に関与して逮捕されたと述べた。また、ワッツアップを通じて拡散されている暴力行為や略奪などを駆り立てる扇動的なメッセージについても警告した。
 一方、アニバル・フェルナンデス治安相はこれらの攻撃は組織的なものである可能性があると強調。政府はまだ確かな情報を持っていないとし、問題を徹底的に調査するために調査チームを組織すると発表した。
 大統領府報道官のガブリエラ・セルティ氏はソーシャルメディアで、一連の略奪や暴力行為は「ハビエル・ミレイ一派による武力作戦」で「不安定化、不確実性の創出、民主主義の破壊が目的」だと証拠もなく非難した。
 前治安相で大統領候補のパトリシア・ブルリッチ氏はソーシャルメディアで現政権の指導力不足を批判。「秩序が必要だ。誰も守ってはくれない」と強調した。同国代議院は「略奪の試み」を非難し、「国民の大きな不満の陰に隠れて法律を破り、混乱を引き起こそうとする小さな不良グループの犠牲になどならない」と述べた。
 政府は一連の出来事を社会的・政治的な反動とは考えていない。だが、急激なインフレによる貧困拡大や大統領予備選挙後の政治的緊張が背景にあるのは事実だ。略奪事件は同国内の不安定さを増幅させており、10月の大統領選挙にどのような影響を及ぼすか、国内外からの注目が集まっている。

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