末期がんの父親を毒殺した息子=情状酌量、陪審裁判で無罪判決

無罪判決を受けた男性(9日付ポンタ・ネグラ・ニュースの記事の一部)
無罪判決を受けた男性(9日付ポンタ・ネグラ・ニュースの記事の一部)

 6年前に自分の父親を毒殺した男性が9日、陪審員裁判で無罪判決を受けた。弁護側は、父と息子には固い絆があり、受け取るべき相続財産もなく、経済的利益を求めた殺人でないことは明らかで、終末期がんに苦しむ父親の姿を見るにみかねての行動だったと主張した。陪審員7人中最初の4人が無罪を主張したため、多数決で決まった。同日付ポンタ・ネグラ・ニュースなど(1)(2)が報じている。
 G1サイトによると、事件は2017年5月6日の未明に、南大河州ナタル市の親子が住む住居内で発生した。当時38歳だった被告人は一般事務員として最低賃金で働いていたが、当時66歳の父親の面倒もみていた。父は末期の喉頭癌を患い、化学療法を受けていた。
 男性の妻はその状況に不満を持ち、苦しんでいる父親を家から追い出すように要求した。それが原因で夫婦仲に亀裂が生じ、23年の結婚生活が終わったという。その後、男性は父親の看病に専念するため職を辞めている。
 被告人の証言によれば、ある日この絶望的な状況に嫌気が差し、父親を毒殺することを思いついたという。購入したネズミ用駆除剤と精神安定の作用がある漢方薬を混ぜて父親に飲ませ、自分もその毒を飲んで自殺を図った。
 しかし、自分だけ未遂に終わり、その後も橋の上から飛び降り自殺をしようと試みたが勇気が出なかったと証言している。叔母の説得もあり、犯行から2日後に警察署に出頭し、父親に毒を盛って殺害したことを自供した。
 裁判はナタル市で行われ、被告人と二人の弁護人が法廷に出頭した。「殺人は実際に起きた。しかし法律には“慈悲”という概念があり、犯罪の背後にある状況や動機を考慮した上で情状酌量することがある。これが、陪審員が無罪判決を出した理由だ」と弁護人のシルス・ベナビデス氏は説明した。
 また二人目の弁護人であるフェリペ・フランコ氏は、「我々は常に善意と誠実さに基づいて裁判を戦ってきたが、今日の結果は、社会が理解した正義を反映したものだ。彼はこの恩赦を受け、重荷なしで人生を再出発するにふさわしい」とコメントした。

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