サンパウロ州政府=麻薬常習集団の移動断念=ボン・レチロ住民の反発で

市警のオペレーション中にクラコランジアで麻薬使用者に銃を向ける警官(19日付G1サイトの記事の一部)
市警のオペレーション中にクラコランジアで麻薬使用者に銃を向ける警官(19日付G1サイトの記事の一部)

 タルシジオ・デ・フレイタスサンパウロ州知事(共和党・RP)は18日、麻薬常習者の溜り場「クラコランジア」をサンタエフィジェニア地区からボン・レチロ地区に移転させると意向を表明。19日にはメディアもそれを報じたが、20日午後、その計画を撤回した。20日付フォーリャ紙など(1)(2)(3)が報じている。
 クラコランジア移転計画は、危険地区を市内中心部から遠ざけることに加え、麻薬中毒者をボン・レチロにあるプラテス市営更生施設に近づけることが目的だった。同施設内には外来医療支援のためのAMAや心理・社会的ケアセンターのCapsなどの医療機関もあり、薬物中毒者の受け入れ体制が整っている。
 しかし、移転計画発表後、ボン・レチロの住民がその措置に反対するオンライン署名を行った。同地区は韓国人コミュニティの存在が強く、韓国系商業施設も集中しており、アジア系人種にとって懸念事項であった。また麻薬常習者らもセントロの3カ所にバリケードを築いて放火するなどして騒乱を起こし、政府の決定に抵抗していた。
 タルシジオ知事はクラコランジアの問題に対して、「行動を個別化する」と発言。そのために同地区にいる人々を特定しようとしている。例えば、刑務所から出所した人や刑罰執行中の人か、更生治療をサポートできる親族がいるかなどだ。
 「我々は人間と向き合っている。クラコランジアを単なる『群衆』として扱うことはできない。一人一人が多様な背景を持っているのだ」と述べている。
 サンパウロ州政府は公式声明の中で、「改めて調査し、プラテス更生施設への流れを誘導する戦略の見直しを行う。問題解決の新たな可能性を検討中で、近日中に発表する予定だ」と発表。麻薬流通を抑制するため、強力な対策を講じるとともに、住宅支援や職業訓練などの公共政策も取り入れることを約束している。
 セントロにはこれらの対策の一環として新しい軍警部隊を設置する予定で、2024年2月までに発足させるという。

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