選挙高裁=前大統領の資格剝奪主張=政治権力と国営放送乱用で=弁護側「有罪には不十分」

ベネジト・ゴンサルヴェス判事()Marcelo Camargo/Agencia Brasil)
ベネジト・ゴンサルヴェス判事()Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

 22日、選挙高裁(TSE)でボルソナロ前大統領と副候補だったブラガ・ネット氏の選挙資格剝奪に関する公判が開始され、ネット氏は「事件に関与していない」ので前大統領のみ被選挙権剥奪との意見書が選挙検察から出された。一方、前大統領の弁護側は、元法相宅から発見された「クーデター草案」は直接の関係がなく、前大統領を有罪にするには十分な証拠がないなどと論じた。22日付G1サイトなど(1)(2)(3)(4)が報じている。
 今回の裁判は昨年7月にボルソナロ大統領(当時)が、各国の大使を集めて、選挙システムの信ぴょう性に疑問を呈する演説を行い、国営テレビ局を通じて放送したことが、政治権力の乱用とメディアの悪用に当たり、個人の利益のために選挙制度を攻撃したことが問題になっている。
 これは16通存在するボルソナロ氏に対する選挙違反の訴えの最初の審理だ。同件は職権乱用も含めた非常に重いものと予てから見られており、ボルソナロ氏にとって不利な裁判との見方が強い。
 前大統領は21日、そうした見方に対し、「2015年のジウマ氏とテメル氏のシャッパも、公判の際に新事実を認めるか認めないかで議論になり、最終的に無罪となった」として、判事投票3対4の接戦の末に無罪になった審理を引き合いに出し、無罪に望みを託した。
 だが、22日に行われた審理の序盤はボルソナロ氏にとって、決して有利なものではなかった。選挙検察のゴネ・ブランコ副長官は「公人としての会の催し方」「自身の職務に直接関すること」「候補としての自分を有利にするやり方」「選挙の過程に影響を及ぼしかねないもの」の四つの観点から、ボルソナロ氏が職権を乱用したとの見解を示し、被選挙権剥奪を勧めた。
 また、同副長官は、ボルソナロ氏のこのような行いが国民の選挙への不信感を高め、それが1月8日の三権中枢施設襲撃事件へと繋がったとの見方も示した。さらに、2021年10月に、同様に選挙システムへの虚偽を拡散したフェルナンド・フランシスキーニ・パラナ州州議がTSEの裁判で罷免されたことも例に挙げた。
 その後は報告官のベネジト・ゴンサルヴェス判事が2時間にわたる報告書の読み上げを行った。また、原告のPDTの弁護団と被告のボルソナロ氏たちの弁護団とが、それぞれの主張も行った。
 PDT弁護士のヴァルベル・アグラ氏は、ボルソナロ氏は告発されるだけの証拠が十分あるとし、アンデルソン・トレス前法相の家から大統領選の結果を無効にする条例原案が出てきたことでも告発されるべきと主張。他方、ボルソナロ氏側の弁護士のタルシジオ・ヴィエイラ・デ・カルヴァーリョ氏は、「トレス氏の家から発見されたものは前大統領とは関係がない」との反論を行った。
 審理は、アレッシャンドレ・デ・モラエス長官が中断を宣言し、27日に延期された。判事投票はそこから始まることになる。
 ボルソナロ氏は22日の審理後、ベネジト判事の次に票を投じる予定のラウル・アラウージョ判事が票の見直しを求め、審理が先延ばしされることを願うと述べた。カシオ・ヌネス判事も票の見直しを求める可能性があると見られている。
 現在の予定では同件の審理は27、29日に行われるはずだが、28日も特例で審理を行う可能性がある。

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